THINK PIECE > 曽我部恵一×藤原ヒロシ
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ミュージシャンの存在意義が変わった?
 
F: 「今、レーベルは自分でやっているんですか?」
 
S: 「はい」
 
F: 「完璧に?」
 
S: 「はい」
 
──お店もやっているんですよね?
 
S: 「お店は友達と。下北で夜は飲み屋みたいな中古盤屋をやっていて」
 
──今のペースが一番良い感じですか?
 
S: 「自分達にとって充分な感じの売り上げがあればいいかな、と。メジャーはすごく大変そうだなって思ったし、やっぱり何十万枚って売れないと、あまりいても意味が無いのかなと。だったら自分達で小規模でやればいいし、その方が自由に色々なことが出来るなって」
 
──自分でやりたいことがはっきりしている人は、曽我部さんみたいなスタイルが、今は一番正しいやり方というか、真っ当な音楽活動が出来るスタンスですよね。
 
S: 「そうですね。もちろん、もっとセールスがある人は、メジャーで良いと思うけれど」
 
──ただ、何十万枚も売れるアーティストもどんどん減っていってるし……。
 
F: 「むしろ、30万とか50万とか売れていた人が、5万になる方がきついよね」
 
S: 「それはありますよね」
 
F: 「今まで3万枚の人が5千枚になっても、そんなに変わらないかもしれいけれど。今はかつて売れていた人の方が焦っている感じ」
 
──とはいえ、一般のユーザーが音楽を欲しがっていないわけではないと思うんですが。どう感じますか?
 
S: 「音楽が好きな人はいっぱいいると思うんですけれども、商業的な音楽と、音楽が好きな人たちが求めている音楽との温度差がすごくあるような感じがしますね。友達が音楽好きだったり、自分が音楽好きだったりして、聴きたいものは何だろう、という時に、すごく探して買わなきゃいけないでしょ。一体レコード会社がお金をかけて宣伝しているものは、誰が買っているんだろうと思うんですよ。でもライブの需要は絶対に増えてる。だからみんな音楽を聴くというより、音楽を体感したいというか、感じたいんじゃないかな」
 
──弾き語りってその音楽を体感するという意味でも、大掛かりなセッティングが無くても良いという意味でも今の音楽状況に合ってるんでしょうね。
 
S: 「それ、すごく大きいと思います。カフェをやっている子達が、弾き語りをやってくれって言うんですよ。『PAとかはないんだけど、マイク1本あったら出来るでしょ?』みたいな。で、『出来ますよ』みたいな感じでやるんですけど(笑)。アコギ1本持って、そういう場所に行くっていうの、僕は好きですけどね。逆にライブハウスで弾き語りっていうのは苦手で……」
 
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同じ弾き語りでも、何かが違う。
 
F: 「そういうカフェなんかでやる場合はどの位の時間やるんですか?」
 
S: 「長い時は、4時間くらい延々と。短い時は1、2時間なんですけど」
 
F: 「それでも1、2時間やるんだ」
 
──ヒロシさんも4時間、どうですか(笑)?
 
F: 「いやいや(笑)。僕は長くて3、40分」
 
──MCの時間も増えたり?
 
S: 「場によってそういう場合もありますけれど、例えば、椅子が用意されていてみんなが集中して聴いている時は、本当に曲だけ。こういう状況で、みんな酒を飲んでいたりだとかすると、もっと変えていきますね」
 
──何時間もやる弾き語りが恒常化すると、だんだん、さだまさしみたいになっちゃうんじゃないかっていう不安は無いですか(笑)?
 
S: 「いえいえ。むしろ良いと思いますよ、さだまさし(笑)」
 
F: 「でも、どこが違うのかなって、いつも思うんだよね、いわゆるニューミュージックみたいなものと。明らかに違うじゃない。それ、どこに差があるのかなって。何なんだろうね?」
 
S: 「何なんですかね」
 
F: 「さだまさしや南こうせつとは同じ楽器を使って、同じようにやっていても、明らかに空気感が違う。そこは何だろうな?他の楽器が、例えばパーカッションが入ってくると、お洒落になるとかならわかるけれど、アコギ一本でも明らかに違いがある」
 
──そこはどうですか? 南こうせつと一緒になっちゃいかんだろう、とか?
 
S: 「いかんだろうとは全然思わないですけど、逆にどうしたってならないですよね」
 
F: 「 “じゃがいもの会”的なのも呼ばれたら行きます(笑)?」
 
S: 「呼ばれそうな気もするんですけどね(笑)。ただパンクを通っているとういのが自分的にはあると思うんですよ」
 
F: 「昔の人達にとってもあるかもね。RCサクセションや古井戸みたいな人達とかぐや姫やさだまさしみたいな人たちとの違い……。同じ楽器で、同じ時代に、同じようなことをやっても、違っている」
 
S: 「面白いですよね、そういう意味では」
 
F: 「音楽の雰囲気だったり、空気感が全然違うから」
 
──そこを聴きたいんですよね。少なくとも曽我部さんを好きなリスナーは。さっきのメジャーレーベルの話でいうと、そこって言葉に出来ないじゃないですか。フォークギター弾き語りなんだけれど、昔のとは違う音楽ですよ、というのを上手く宣伝することができないんですよね。逆にメジャーは宣伝しやすい、言葉で説明しやすいアーティストばかりになってしまう。
 
 

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