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text: Andrew Bunney translation: Mayumi Horiguchi
トミー・ロバーツはロンドン市内に多くのファッションおよびデザイン関連の店舗を所有し、運営している。
それらの店舗は服飾という概念を越え、ひとつの時代の精神をクリエイトし、ポップカルチャーの重要な一部として成功を収めた。
このほど、そんなトミーに関する本『Mr Freedom: Tommy Roberts - British Design Hero』がローンチされたばかり。
なぜトミー・ロバーツがそれほどまでに重要なのか。
そのわけを知るために、アンドリュー・バニーが著者であるポール・ゴーマンに話を聞いた。
*注1:『ザ・ルック』シリーズ……現在までに2冊が発売されている。2006年4月5日発行の『ザ・ルック:アドベンチャーズ・イン・ロック・アンド・ポップ・ファッション』(原題『The Look: Adventures in Rock and Pop Fashion』)はマルコム・マクラーレン、ポール・ゴーマン、ポール・スミスの共著。2001年3月1日発行の『ザ・ルック:アドベンチャーズ・イン・ポップ・アンド・ロック・ファッション』(原題『The Look: Adventures in Pop and Rock Fashion』)はポール・ゴーマンの単著。
*注2:『タイムズ (The Times)』 :英国の保守系高級紙。1785年創刊で、世界最古の日刊新聞。
*注3:『ガーディアン (The Guardian) 』……英国の新聞。中道左派・リベラル寄りと言われる。
*注4:『デイリー・ミラー(The Daily Mirror)』……英国の日刊タブロイド判新聞。しばしば扇情的な記事を売り物とする。日本のスポーツ新聞のようなもの。
*注5:『クレプトマニア』……ロバーツが1966年に、パートナーのチャーリー・シンプソンと共に、ソーホーのキングスレー・ストリートに開いた店。ヴィクトリア朝の物品やミリタリー・ウェアを取り扱っており、顧客にはジミ・ヘンドリクスやザ・フーなどがいた。67年には、二店舗目の『クレプトマニア』がカーナビー・ストリートにオープン。
*注6:『トゥー・コロンビア・ロード』……ロバーツが息子キースと共に、2001年にイースト・ロンドンのハックニーにオープンした店。コンテンポラリー家具や、文化的に価値のある人工物:加工品を販売。その後、ロバーツは引退した。
*注7:『ハング・オン・ユー』……マイケル・レイニーが創業した、ロンドンのチェルシーにあったブティック。マイケル・レイニーは、男爵であるハーレック卿(Lord Harlech)の娘で、一時期エリック・クラプトンの恋人として有名だったアリス・オームスビー・ゴアと結婚していたことでも知られている。
*注8:『グラニー・テイクス・ア・トリップ』……1966年、ロンドンのキングス・ロードにてオープンした店。「スウィンギン・ロンドン」における、初のサイケデリア・ショップといわれ、時代の先駆者的存在の店として脚光を浴びた。
*注9:『サージェント・ペパーズ』……1967年に発表された、ビートルズ8作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』("Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band")のこと。アルバムのコンセプトもそうだが、ジャケットでメンバーが来ている服は、当時流行していたサイケデリック色が色濃く反映されたものとなっている。
*注10:ポール・リーヴス……16歳でファッションデザイナー、メーカーのオーナーとして活躍。ジミー・ペイジの衣装などを手掛けた。
*注11:ゴールドスミス・カレッジ……ロンドン大学を構成するカレッジのなかのひとつ。大学には15の学部があり、それぞれが相互に関連性を持ちながら研究を進めている。社会科学や人文系の科目だけでなく、現代のアート&デザインにも力を入れており、卒業生にはヴィヴィアン・ウエストウッドなどがいる。
*注12:ワールズ・エンド……ロンドン南西部、チェルシーのキングス・ロード430番地にて、ヴィヴィアン・ウェストウッドが、マルコム・マクラーレンと始めた店。ウェストウッドは71年12月、マクラーレンと共にキングスロード430番地にフィフティーズ調ファッションのブティック「レット・イット・ロック(LET IT ROCK)」をオープン。72年、店名を「トゥー・ファスト・トゥ・リブ、トゥー・ヤング・トゥ・ダイ(Too Fast to Live, Too Young to Die)」に、74年には「セックス(SEX)」に、76年には「セディショナリーズ(Seditionaries)」に変更。75年に、店の常連客だったジョニー・ロットンやシド・ヴィシャスを擁するパンク・バンド「セックス・ピストルズ(SEX PISTOLS)」をプロデュース。SM的要素を採り入れた前衛的なパンク・スタイルを流行させ、ヴィヴィアンは「パンクの女王」と呼ばれた。そして79年にブティック「ワールズ・エンド」をオープン。伝説の店となった。
*注13:ジョン・クリトル……ビートルズがキングス・ロード161番地にて1968年にオープンした、二店舗目のアップル・テーラリングの前身であるショップ、『ダンディ・ファッションズ』を経営していたオーストラリア人ファッションデザイナー。クリトルは、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フー、プロコム・ハルム、エルヴィス・プレスリー、ジミ・ヘンドリクスの衣装デザインを手掛けた。
*注14:ブライアン・ジョーンズ……ロック・バンド、ザ・ローリング・ストーンズの元ギタリスト兼リーダー。1969年7月に27歳で死去。
*注15:オジー・クラークとアリス・ポロック……オジー・クラークは60年代後半から70年代前半において、ロンドンで活躍した伝説のデザイナー。65年にブティック『クォラム』を開いたアリス・ポロックと出会い、店のデザイナー兼経営パートナーとなる。その後、ブランド『アリス・ポロック』は、最先端のロンドン・ファッションとして60~70年代に流行。ミック・ジャガー&ビアンカ夫妻やブリジット・バルドーなど、世界的なセレブが顧客だった。店は83年に経営破綻した。
*注16:ミスター・フリーダム……1969年~72年まで存在していたショップ。キングス・ロード430番地でスタートしたが、70年代にケンジントン・チャーチ・ストリートに移転。
*注17:ブローセル・クリーパーズ……通称、ラバーソールのこと。英国のメーカー「ジョージコックス」が1949年に、伝統のグッドイヤーウェルテッド製法を用いた商品を開発、発売。50年代にリーゼントのテディボーイ達にヒット。キングス・ロードにあった店「ロボット」がミュージシャン用の靴を販売しており、70~80年年代に、このロボット別注品の製品が大ヒットし、略して「クリーパー」と呼ばれていた。
*注18:ジムフレックス……1936年、イギリス国軍に体育用のショーツを提供することから始まったブランド。英国では非常にポピュラーなブランドであり、英国ナショナル・ラグビーチームやチャールズ皇太子が所属していたポロクラブのユニフォーム、イートンやハーロウといった名門プレップスクールの体操着としても採用されている。
*注19:ショワディワディ……オールディーズをカヴァーしたり、オールディーズ・テイストのオリジナルを演奏する8人編成のバンド。1973年にザ・チョイスとザ・ハマーズが合体して結成。結成当時はポップなバンドだったが、デビュー曲 「HEY ROCK AND ROLL」 が74年全英2位の大ヒットを記録してから、オールディーズのカヴァーなども演奏するようになった。続くオリジナル曲が中ヒットに留まったため、以後は本格的にオールディーズ・カヴァーに転向。日本での知名度はあまり高くはないが、本国イギリスでの人気は高い。