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一方で、カルチャー系の人間は“面白い”ことをやれば、人はお金を出すだろうと考えている。ファッションも含めて。なぜなら、自分たちがそうだから他人もそうだろうと、ある意味、甘く考えてる(笑)。でも、今の世の中の大勢は『“面白い”ってなんだよ。“便利”とか“早い”とか“お得”ってのに、人は金を使うんだよ』ってわけで。 |
高城: |
「あと欲望ね。女にモテるとか。両方ともバランス悪いですね。面白く、スピード感や携帯感があって、さらにお得でなくてはならない世の中だからね。だから、僕の新刊も660円で出してます。ハードカバーで、しかも上巻下巻のトフラーもフリードマンも、時代にあってないと僕は思うんです。そして、今後インターネットはメールの比重がますます高くなるでしょう。しかも短いやつ。映像のストリーミングも良い。これも短い時間のヤツ。そしてiTuneのようなTCP/IPを使ったwebではないもの。このあたりが、面白くかつお得になるゾーン。で、webに関してあえていうなら、個人のサイトを持つということ。mixiの中にではなくて。全責任を自分で負った完全に個人のサイトを持つ。それが本当は正しいサイバーな世界。そういう個人のサイトが緩く連携したものがこれから出てくるんじゃないかな。Yahoo!の次として、個人サイトだけのディレクトリーも出てくるでしょう。色々言うけど、webの技術なんて、どうでもいいんですよ。大事なのはスタイル。逆に技術的なことを語る人ほど技術的なことを知らないっていうのもありますね。僕、びっくりしたんだけれど、web2.0について熱く語っている人たちと話したら、次のインターネット技術について何も知らないんですよ。例えば、IPv6に規格が変わるんだけれど、それを知らない。第四世代携帯電話の技術も知らない。目先の技術、すなわち『今、金に換金できる』技術しか知らないんですよ。僕とは合わないですよ、やっぱり。魂入ってないし、そんな連中と仕事しても楽しくないもの。しないけど(笑)」 |
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その「面白さ、楽しさ」を共有できないって、それこそ格差ですよね(笑)。収入より、そういう人生に求める質の方が、今、格差があるんじゃないでしょうか。 |
高城: |
「スタイルや文化における格差がこれからどんどん広がっていくだろうからね。文化的に乗り遅れる人が増えますよ。ハニカムに実際関わってる人も読んでる人も、既に差が出てるように思いますね。発言でよくわかる。それがインターネットなんですけどね」 |
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そこで、これからの日本は“文化”が大事になるというのが、高城さんの主張だと思います。 |
高城: |
「そうですね。まず、国という大きな話でいうなら、日本の景気は良くなるように言われてますが、それはウソです。日本は現在、財政状況も悪いし、今後、景気が良くなる可能性もありません。それはしょうがないんです。ただ僕たちが失ってはいけないものは何かというと、それが“文化”だと思うんですよ。これからは経済に変わって文化が日本を引っ張っていくと思います。というか、それしかない。では、僕たち日本人が 持っている文化、浮世絵だとか歌舞伎とかではなくて、現代的な文化とは何かというと、これがほとんど無い。少なくとも、それをまとめる作業をしていない。世界を見ると中国で一番流行っているファッション誌は日本の赤文字雑誌だし、台湾も日本ブームだし、NYやロンドンの先端を行ってるヤツらは常に渋谷・原宿をウォッチしてます。ということは現代の日本文化はある意味、世界の最先端に立てる可能性がある。日本的な文化の特徴というのはすべてが分断されていること。大体、どこの国も地域も歴史の流れの中で関連性を残して文化が変化していくのに、日本は戦争や経済発展、世代交代などを機会に、それまでと全く異質なものが突然変異的に生まれてくる。それが良いところでもあるんだけれど、あまりにもまとまりがない。これをまとめることを“スタイル化=スタイリング”と僕は呼んでます。つまり、突然湧いてきたものと歴史的なもの、時代やジャンルがバラバラで分断されているものをまとめる力がスタイリング。このスタイリングというワザを国民全員が身につけることで、新しい日本の文化として、そしてビジネスとして世界に発信していく。それがこれからの日本の姿であり、そうなって欲しいと僕は思うんです。というか、それしか本当にない。簡単に言うと、『作るのがうまい国』から『考えるのがうまい国』への転換です。そして、そのスタイリングのセンスを前提にインターネットを含めた新しいテクノロジーを使えばいい、と」 |
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ただし、そうなると個人のセンス、そして個人のネットワークがとても重要になりますね。さらに、それぞれのアンテナの感度により手に入れられる情報のレベルも変わってくるんじゃないでしょうか。 |
高城: |
「アイデアは、個人から出ますからね。個人パワーはますます増大し、そして様々な格差はもっと広がります。そういう意味での勝ち組/負け組は深刻ですよ。今までは知ってるか知らないかだけの違いだったけれど、それが現実の場面で大きな影響を及ぼすようになる。知ってる人は助かるけれど、知らない人は死んでいく、とか本当にありますよ」 |
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それは、ある種のコミュニティに入っていれば大丈夫ということでもないですよね。情報を手に入れて、そこからさらに新たな情報を入手するような手段を各自がクリエイトしていかなければならない、ということでしょうか。 |
高城: |
「そうです……。すごい社会になりますよ、これから……。ここまで読んで、ちっともわからない人は、もうヤバイ(笑)。僕はだいたい10年ごとに予想をたてるんだけれど、20年前に予想した10年前も、10年前に予想した現在も大体あってるから、これから10年後もかなりの確立で当たるんだと思うけど(笑)、競馬の予想屋じゃないけど、まあ、すごい社会になるはずです。僕が気になるのは社会がどう変わるかとか、人々の感受性やライフスタイルがどう変わるかということなんです。そして未来のビジョンを創出するのが僕の大きな仕事です。それは、かつてのアルビン・トフラーとかも同じなんでしょう。アメリカでは未来学者が数多くいて、ホワイトハウスにもいるけど、日本で僕みたいにそんな先の話をする人は、ただの怪しい人(笑)。もしくは、経済などの専門家。そうじゃなくて、サブカルから為替までわかってないとマズイ時代なんです。トフラーの新刊も、フリードマンの『フラット化する世界』も、既に古い。彼の“フラット”という概念は5年前の話ですね。いまさら、何言ってるの?って感じ。これから僕は“リキッド”化すると思うんです。インターネットが典型的だけれど、確かにすべてがフラット=差異がない世界になったように見える。けれど、これからの実社会は、よく見るとキレイな部分や汚い部分が偏在していてて、部分的に固まったり、広がったりしながら常にカタチを変えていくようなイメージ。水をバシャーンってこぼした状態に似ていると思う」 |
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その変化した社会での未来の日本の姿を考えるために『ヤバいぜっ! デジタル日本』ではイギリスが、国の政策として国家ブランディングを行っているということを説明されていますね。ただ、日本の場合、せっかく面白くなりそうな文化が生まれても官僚や政治家が口出しを始めたら駄目になってしまう気もするんですが。 |
高城: |
「今まではそうですよね。だって連中は『マンガだ、アニメだ』って今頃言ってるわけでしょう。遅いですよ。彼らは日本の本当の価値をわかってない。だから、政治も変えていかなければいけないんです。時代の感性を持った政治家が出てこないといけない。あるいは、政治と僕らを繋ぐものが必要ですね。イギリスにはピーター・マンデルソンという人物がいて、ブレア政権内でその役目を担った。彼はいまEU全体を見ています。そういう鍵になる人物が日本にも必要でしょうね。じゃないとヤバいよね。というかそろそろ気づかないと。今の日本の状況が本当にヤバいってことを」 |
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『ヤバいぜっ! デジタル日本―
ハイブリッド・スタイルのススメ』
(集英社新書) |
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