ピーター ケナードはアカデミックな技術、理論とともに、コンセプトにもしっかりとした基軸のある作家。現在は出身校であるロイヤルカレッジオブアートで写真科の講師も務めている。
彼は若い頃、ゴヤに影響を受け絵画に取り組んでいた芸術家であったが、ある時ペインティングの直接性の不足を感じ、イメージの背後にある隠された真実を表現するために、フォトモンタージュの技法を選択したのだという。
そして戦争と貧困の2大テーマを表面化させることで創作の基盤を確立していった。ケナード自身も自らの作品についてこう述べている。
「私の作品のポイントは、最終的にそれらを受け入れ難くするために、あえて認知しやすいアイコン的なイメージを使用していることです。パワフルなミサイルのイメージを壊すことによって古い現実が粉々になり、割れ目や断片から新たな可能性が出現するのを見せるということでもあります」。
つまりはアカデミックな絵画と同じように、具体的な形象を用いて、抽象的な観念を伝える表現法を駆使しているため、作品にはおのずと強さや深みが与えられているのである。 |