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THINK PIECE

東京フールズゴールド

日本の音楽業界を舞台にした、川﨑大助による長編エンターテインメント小説にして、
「90年代」、或は「渋谷系」への鎮魂歌

13 10/30 UP

photo: Kentaro Matsumoto interview: Akio Nakamata

 

──
この長編のちょうど真ん中に、「Interlude」という短い章がありますね。ここでは東京という町が「彼女」という三人称で呼ばれ、丈二たちの生きる世界を俯瞰するかのような視点が示されます。僕はここがすごく好きなんですが、この章を入れた理由は?
「読んだ人によく聞かれるんですが、これはエド・マクベインの影響なんですよね。マクベインの作品は三人称の警察小説だから、複数の登場人物が動きまわるんですが、ときどき作中にInterludeが入って、そこではやはり町を彼女、Sheと表現している。物語の本筋とはなにも関係ないんだけれど、結局それがどこの町を舞台にした話であるのかを、俯瞰で見せるシーンがある。

『東京フールズゴールド』は第一章から順番に最初から書いていったんですが、ちょうど前半を書き終えたところで、僕自身がボロボロになった。たぶん僕はどこかでモラリストなんですよ。だから主人公の丈二が悪事を行っていることに、小説を書きながら、すごく苛まれていた。多分、丈二も作中で苛まれていて、だから前半の最後に彼は罰を受けることになる。それを書くことは、はじめから決めていたんです。その場面を書き上げたとき、ああしんどかった、これはお客さん(読者)もしんどかっただろうと思って、Interludeは息抜きのつもりで書いたんです。でもその時点で主人公は ──これはネタバレになっちゃうかもしれないけど ──埋まっている(笑)。視点人物がいないから、しかたなく三人称になったわけです。前半では、主人公が地べたの上を走り回っている。それを上から俯瞰する視点ができたことで、結果的に小説に立体感ができた。主人公の丈二も、そういう視点をずっと意識しながら行動してきたはずで、『あ、こっちがあったんだ』ということに僕自身も気づいた。そのことで、後半戦のトーンがずいぶん変わりました」
──
後半のエピソードまで伺ってしまうとホントのネタバレになってしまうので、このへんで終わりにしようと思います。「渋谷系」の時代への哀悼とリリシズムが、500ページを超える作品の隅々にまで脈打っているこの作品、1990年代を知る世代だけでなく、いまの日本は面白くないと思っている若い世代にも読まれるといいですね。今日はありがとうございました。

 

「東京フールズゴールド」

川﨑大助・著
河出書房新社
1,995円[税込]
 

『東京フールズゴールド刊行記念』
川﨑大助 × カジヒデキ トークショー 「ザット 90's ショウ」

会期:2013年11月5日(火) 19:00~20:00
会場:蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース

[参加方法]
川﨑大助著『東京フールズゴールド』を代官山蔦屋書店にて、
購入ご予約頂いた方への先着70名にイベント参加券が配布されます。
詳細は下記サイトを参照ください。
http://tsite.jp/daikanyama/event/002620.html

[問] 蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース
tel: 03-3770-2525
 

川﨑大助 × 片岡義男 公開トークイベント
「はじめての CITY BOY 文学塾」
川崎大助『東京フールズゴールド』発売記念
~そうだ、片岡さんに訊いてみよう~

会期:2013年11月9日(土)19:00~21:00 (18:30開場)
会場:本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-12-4 2F

前売/席確保(1500yen+500yen/1drink)2,000yen
当日現金支払(1500yen+500yen/1drink)
*チケットの購入など詳細は下記サイトを参照ください。
http://bookandbeer.com/blog/event/20131109_kawasaki/

[問] 本屋B&B
tel: 03-6450-8272