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THINK PIECE

SALU × BACHLOGIC

"本当の自分"をさらけ出したSALUのファースト・アルバム「IN MY SHOES」。

12 2/29 UP

photo: Kentaro Matsumoto styling: Jun Hirano text: yk

 

──
実際の制作はどのようなプロセスで進めていったのでしょうか?
S
「BLさんとの制作は、送られてきたトラックに合わせて家でリリックを書いてラップしてみて、形になったところでスタジオに入って録る、の繰り返しでしたね。OHLD君とは二人でスタジオに入って、OHLD君の弾くピアノやビートを聴きながら、横でリリックを書いていました。3〜4時間してお互い出来あがったところでレコーディングして、その後は意見を出し合いながら作り込んでいく感じでしたね」
──
SALUさんが作るリリックやフロウに対して、BACHLOGICさんからのディレクションはありましたか?
BL
「トラックに対する声のトーンは相談しつつでしたけど、バースに関してはSALUが持ってきたものをほぼ通していましたね。ただフックのメロディやコーラスは、このアルバムで特に重要なパートでもあるので、慎重に考えました。フックって曲を構成するものの中で一番音楽的であって、音楽的じゃない部分なんですよ。音楽的であればかっこいいフックなのかといえばそうではないし、メロディとワード、声質、色んな要素が合わさってできるものなので、一番難しい部分ではありました。それは今回の制作で見えてきた、次回への課題でもありますね」
──
アルバムのリリースに先立って発表されたシングル、"Taking A Nap"や"The Girl On A Board"がTwitterやSNSで話題騒然となっていますが、"In My Shoes"の中の"The Watcher On Woods"では、そういったメディアに対する苦言がリリックになっていますね。
S
「僕も2〜3年前まではSNS関係を色々やっていたんですけど、現実に生きているこの世界とは別の世界でも自分のキャラクターを置いて生活する、ということに嫌気が差しちゃったんですよね。現実でもいっぱいいっぱいなのに、もう一つの世界でも生きなくてはならないということに疲れちゃって。やっている人はそれを有効活用すれば良いと思うんですけど、その付き合い方はしっかり考えた方がいいと思います」
──
SALUさんの独特のスタイルの中でも、リリックというのは特に重要な要素だと思うのですが、普段どのようなところからインスピレーションを受けているのですか?
S
「僕が感じる良いリリックというのは、現実の世界では声に出せない、心の底から生まれる本当の言葉だと思うんです。それって日常生活ではなかなか言えなくて、自分の内面にしかないものなんです。それで、それを現実の世界で表現できるのが詞だと思っています。だから、他の人にとっては何の価値もないものだったとしても、自分の生活を送る自分自身にしか書けないものをリリックにするようにしています。家にいる時間、寝る時間、大事な人と過ごす時間、やりたくないことをやる時間、虐げられていると感じる時間、最高に幸せだと思う時間、新しいものに触れる時間、そういった全てのものが複雑に絡まって、そこから生まれてくるものですね」
BL
「正直に、嘘をつかずに言っているというところは魅力ですよね。本来はラッパーとして当たり前のことかもしれないですけど、最近は回りくどくて嘘臭い人が増えていて、なかなか素の自分を出すことが難しくなっていますから。そういう意味での難関は突破しているので、今後が楽しみですよね」
S
「今までが嘘と言い訳を繰り返してきた人生だったので(笑)。言い訳って自分がしたことに対して、無理矢理にでも理由をつけるってことじゃないですか。だから本当の自分をさらけ出す時にも、きちんとした理由を考える癖がついているんですよ」

 

──
現在のSALUさんの自然体なスタイルから考えると、初めて好きになったラッパーがEminemや50 centだったというのは意外に感じますね。
S
「憧れもあって、始めは彼らみたいなラッパーを目指していたんですけど、彼らのような環境で育ってきたわけでもないし、そもそも日本人だし、無理だったんです。真似前提のスタートだったから、結局偽物でしかなかったんですよね。だから、変に飾ったり偽ったりせずに、本当の自分で勝負するようになったんです」

──
今回のアルバム中の楽曲"The Girl On A Board"や"To Come Into This World"に参加している鋼田テフロンさんは、他にも多くのアーティストの楽曲で素晴らしい歌声を披露されていて巷では大人気ですが、今後ソロとしての作品をリリースする予定はないのでしょうか?
BL
「どうなんでしょうね(笑)。僕としてもテフロンに曲を書くとしたら、というイメージがまだ定まっていないところがあるんですよ。でも、本人のモチベーションは高いと思いますよ」
──
ファースト・アルバムを作り上げた今、今後に見えてきた目標や課題はありますか?
S
「作品は聴いてもらって初めて存在理由が生まれるものだと思っているので、今は"In My Shoes"をたくさんの人に聴いてもらいたいと思っています。また、ここ2、3ヶ月で、こういう曲でこういう風に歌えばもっと伝わるんだという発見や、伝えたいこと自体も増えてきたので、立ち止まらずにどんどん新しい曲を作っていきたいですね」
BL
「One Year War Musicとしては今後も良いアーティストがいればリリースしていきたいと思っています。でも無理にやる必要はないと思っているので、そこはマイペースに続けていきたいですね。SALUに関しては先の予定はまだ無いですけど、レーベルやリリースに関係なく、今後も一緒に曲を作っていきたいと思っています」

 

SALU「IN MY SHOES」

One Year War Music / Lexington

配信 - 2012年2月29日(水)発売
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SINGLE "Swim In My Pool" (Free DL)

CD - 2012年3月7日(水)発売
2,835円[税込]
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