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THINK PIECE

Grand Gallery

ライフスタイルに新しい化学反応が起こる場所。
リニューアルした、グランド・ギャラリー。

11 8/9 UP

photo:Masaki Sato text:Jun Namekata

独自のスタンスとスキームで私的かつ良質な音楽を創り出し続け、多くのアーティストからも絶大な支持を受ける音楽レーベル、グランド・ギャラリー。その象徴的的存在でもあった同名の人気ショップが、この夏満を持して移転。その独自の世界感をさらに深化させて登場した。生まれ変わったショップの魅力とは? グランド・ギャラリーが見つめる展望とは? 「これは到達点ではなく、まだまだやりたいことの一部」と語るプロデューサー、井出靖の今、そしてこの先のヴィジョンを探る。

井出靖

音楽プロデューサー、アーティスト。Grand Gallery他、5つのレーベルオーナーとして、120を越えるタイトルをリリース。近年では金原千恵子等のプロデュースを手掛ける。自身のアルバムも現在製作中。2006年に渋谷宇田川町に同名のセレクトショップを開店。2011年7月に代々木公園に移転、リニューアルオープン。
http://www.grandgallery.jp/

 

──
井出さんが主催する音楽レーベルと同名のショップ、グランド・ギャラリーが渋谷宇田川町にオープンして5年。このタイミングで移転を決意されたのはなにかきっかけがあったのでしょうか?
「お店をオープンしたときは渋谷にはまだたくさんレコード屋があったし、洋服屋もあった。でも今はだいぶ環境も変わって、お客様の流れが変わったんですよね。それに自分たちが扱っている商品を知ってここに来てくれるお客様と渋谷の喧噪とが合わなくなってきたのもあります。それで、自分たちにはもう少しレイドバックした場所の方がむいているんじゃないかと。実は1年半くらい前からそろそろ移転した方がいいかなとは思っていたんですが、なかなか踏ん切りがつかなくて。そういう意味では、きっかけとなったのはやはりあの地震でした」

──
宇田川町のグランド・ギャラリーはビルの2階〜4階で展開されていましたよね。4階が自主レーベルのCDを取扱うショップ「グランド・ギャラリー」で、3階はヴィンテージポスターや写真集を扱う音楽とアートをテーマにした「タータウン」、2階は旅をテーマにしたアパレルや雑貨を扱うセレクトショップ「モナコ」と。
「それと5階にはレコーディングスタジオもあって、地震の日は実際大変でした。それで、やはりもっとゆったりと構えられる場所がいいなと。客層的には青山周辺も良かったのですが、ちょうどレコーディングスタジオやギャラリー(ビーチ・ギャラリー)も近くに見つかって、この代々木公園のそばにしたんです」
──
移転して大きく変わったところはどんなところですか?
「まず、ゆっくり見ていただけるスペースになったというのは大きいですね。前はやっぱりうるささもあったし、お店もひとつひとつが小さかったですから見せたいものが見せられなかった。いや、実は今もまだ見せきれていないんですけど(笑)、以前より品揃えは充実していると思います。そういう意味では、移転というよりも自分たちの中では新しい店を作っている感じになってきてて」

 

──
確かにそんなイメージです。商品の量も全然違いますよね。
「そうなんです。なんで、最後にショップの名前をグランド・ギャラリーにすべきか違う名前にするかも悩んだくらい。今は、5つのショップをこのワンフロアでやっている感じです。お店に入って右手は旅をテーマにした「モナコ」の世界。その向かいにCDショップとしての「グランド・ギャラリー」。一番奥が写真集やポスターを扱う「タータウン」。そしてお店に入ってすぐ左手には「モラスク」のコーナーがあります。以前、少しだけ商品を扱っていたんですけど、今はショップインショップという形。サーフボードとスイムショーツ以外はすべて扱っています。特に子供服は全サイズ揃っていますね。で、ショップの中にもうひとつ小部屋があって、そこではラルフローレンのマーチャンダイズから独立した、今日本でも既に話題となっている「RTH」を日本で独占展開。9月にはコレクションもほぼ揃うので、これは注目です」

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音楽レーベルとしてのグランド・ギャラリー同様、我が道を行くというか、やはり私的な感覚をうまくショップとして実現させた空間という印象を受けます。これは井出さんにとって理想的なショップが出来上がったと言っていいんでしょうか?
「理想的というか…これが今後どう広がっていくかはまだ分からないんですけどね。ただ、モラスクもRTHも、わりと個人的なショップやブランドが大きくなったようなところで、そういう人達との関係をゆっくり紡いでいってお店ができるというのはいいですよね。もちろん、大きな企業とはやりたくないとかそういうのではまったくないんですが、たまたまオーナーが自分たちの仲間とやっているようなお店と知り合う機会が多いというか。何年か前だったらこれが海外の音楽レーベルだったりしたんだと思います。それが今は、海外の個人でやっている小さな洋服屋さんを日本にもってくることに変わってきたのかなと思う」
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展開されるアイテムもオリジナリティの強いものが多いですが、バイイングも明確なイメージを持って行っているんですか?
「それは実はそんなにないんです。出会いというか、自然な縁の中でチョイスしていくほうが多いかな。でも出会って“これ!”と感じたものは、そこにあるもの全部買うみたいなクセがありますね。例えばヒースセラミックスのヴィンテージのテーブルウエアも扱っていますが、見つけた場所に200枚あれば200枚全部買うみたいな。でもね、そうすることで僕が思う適正価格を維持できるというのもあるんですよ。ヴィンテージものはときに必要以上に高い値段がつけられていることもありますが、うちでは現行品とほぼ変わらない値段を付けている。そういうメリットもあるんです」