── サイコさんのキャリアのなかで、アルバム一枚を完全にピアノソロだけで制作したというのは初めてですよね。こうしたスタイルでアルバムを作るというアイデアはいつから、どのようなかたちであったんですか。 |
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サイコツカモト (以下:S) |
「随分前から、そういうものが出せればいいなというアイディアはあったんですけれど、なかなか思い切りがつかないというのがあって。ミュージアム・オブ・プレートの場合はトラックをまとめる作業もそうですし、ゲスト・ミュージシャンに参加してもらったり、自分一人ではない部分もあるわけです。そこから本当にピアノだけの、コアだけのものを発表するということへのダイブができない感じだったんです」 |
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── ミュージアム・オブ・プレートとして、ピアノだけのアルバムを作れなかった理由、あるいはサイコ・ツカモト名義でこうしたアルバムを作った理由とはなんでしょう? |
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S: |
「個人としての部分が大きいかな。今は自分のなかで人生における一区切りがついた感じなんですよ。それで、やるなら今かなと思って。なので、ミュージアム・オブ・プレートの名前は残しつつ、あえてサイコ・ツカモト名義で出しました。ミュージアム・オブ・プレートではできないというよりも、これは塚本サイコでやりたかったから」 |
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── そこが面白いと思うんです。あえて皮層的なことを言えば、一般的にミュージアム・オブ・プレートの方が、前衛的というか現代音楽的というか、言ってみれば、ある種の難解さがあると思うんですよ。それに比べて、このアルバムにはもっと普遍的なポピュラリティがあると思うんです。聴きやすい、というヤツですね。それで言うと、普通に考えたら、ミュージアム・オブ・プレートみたいな音楽を作ることの方が、勇気が必要だと思うんですけれど(笑)。 |
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S: |
「私の場合は逆ですね(笑)。周りに個性的なトラックメーカーやミュージシャンが多いので、自分がバックグラウンドに持っている現代音楽をベースに、そうした人たちとコラボレートしていくというのは私にとって、自然なことだったんです。むしろ、今回のように万人に受け入れられて欲しい、広くいろんな人に聴いて欲しいと思うものを出す方が勇気が必要でしたね」 |
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