THINK PIECE > Interview With Saiko Tsukamoto
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クラシックピアノで培われた音楽的な教養をもとにした高度な音楽的感性をコンテンポラリーなサウンドプロダクションで作品化した独自のアドバンストミュージック/サウンドアートでコアなファンを掴んできたミュージアム・オブ・プレート=塚本サイコ。その塚本サイコがソロ名義でピアノインストのアルバムをリリースする。
エルヴィス・コステロ、プライマル・スクリーム、ポリスのカバーを含んだこのアルバムは、あらゆるリスナーに対しオープンであり、なおかつ巷に蔓延するチープなヒーリングミュージックとは明確に一線を画す、優雅でインテリジェントな楽曲が並ぶ。
「音楽」を巡る状況が大きく変化しつつある現在において、逆説的ともいえるほどに、永遠に変わることの無いであろう普遍的な魅力を携えて現れたこのアルバムは、「音楽」の、そして「塚本サイコという一人のアーティスト」の“再生の物語”そのものなのである。
  saiko tsukamoto
作曲家/ピアニスト
ミュージアム・オブ・プレートとして93年にクルーエルからデビュー以後、5枚のアルバムをリリース。2004年にベスト・アルバム”Desert Museum”をリリース後、ユニット名を改め個人名義での活動をスタート。カフェ運営者としての顔も持つ。2月中旬には運営するカフェ”森のガクショク”でリリース記念ライブも行われる予定。
http://www.crue-l.com
 
 
── サイコさんのキャリアのなかで、アルバム一枚を完全にピアノソロだけで制作したというのは初めてですよね。こうしたスタイルでアルバムを作るというアイデアはいつから、どのようなかたちであったんですか。
 
サイコツカモト (以下:S)
「随分前から、そういうものが出せればいいなというアイディアはあったんですけれど、なかなか思い切りがつかないというのがあって。ミュージアム・オブ・プレートの場合はトラックをまとめる作業もそうですし、ゲスト・ミュージシャンに参加してもらったり、自分一人ではない部分もあるわけです。そこから本当にピアノだけの、コアだけのものを発表するということへのダイブができない感じだったんです」
 
── ミュージアム・オブ・プレートとして、ピアノだけのアルバムを作れなかった理由、あるいはサイコ・ツカモト名義でこうしたアルバムを作った理由とはなんでしょう? 
 
S: 「個人としての部分が大きいかな。今は自分のなかで人生における一区切りがついた感じなんですよ。それで、やるなら今かなと思って。なので、ミュージアム・オブ・プレートの名前は残しつつ、あえてサイコ・ツカモト名義で出しました。ミュージアム・オブ・プレートではできないというよりも、これは塚本サイコでやりたかったから」
 
── そこが面白いと思うんです。あえて皮層的なことを言えば、一般的にミュージアム・オブ・プレートの方が、前衛的というか現代音楽的というか、言ってみれば、ある種の難解さがあると思うんですよ。それに比べて、このアルバムにはもっと普遍的なポピュラリティがあると思うんです。聴きやすい、というヤツですね。それで言うと、普通に考えたら、ミュージアム・オブ・プレートみたいな音楽を作ることの方が、勇気が必要だと思うんですけれど(笑)。
 
S: 「私の場合は逆ですね(笑)。周りに個性的なトラックメーカーやミュージシャンが多いので、自分がバックグラウンドに持っている現代音楽をベースに、そうした人たちとコラボレートしていくというのは私にとって、自然なことだったんです。むしろ、今回のように万人に受け入れられて欲しい、広くいろんな人に聴いて欲しいと思うものを出す方が勇気が必要でしたね」
 
── ミュージアム・オブ・プレートでは他のアーティストやクリエイターとのコラボレーションによる作業が多かったわけですが、その点、今回のアルバムのような曲を作る場合、制作のプロセスや曲作りもミュージアム・オブ・プレートの時とはかなり違う気がしますが、どうなんでしょう?
 
S: 「かなり違います。これまでは、アルペジオの、いわゆる左手が奏でるコード感であるとか、テンションのコードを入れたりとか、ちょっとひねりを入れないと気が済まなかったんですけれど、今回は本当に子供に弾いて聴かせているような、自然に自分の内側から出てくるものを大切にしたというような感じです。プリプロの段階からピアノの録音を山の中のスタジオでやったことが大きいかも。周りを自然に囲まれながら静かなところで、自然に出てきたものを大切に作った感じですね。レコーディング自体、ピアノからダイレクトに録ったものを使っていて、録ったものにほとんど手を加えていません。そういう意味では音とか、音像とか、タッチとか全てのものが今までの作品とは違っていると思います。ただ自分で言うのもなんですが、エッジィ感というか、ファッション性みたいなものが今回のものには少ないような……」
 
 

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