── トレンド、ということではDJの持つ存在感がここ数年で様変わりした気がします。よく言われる「クラブがライブハウス化した」という言葉にあるようにクラブに集まる人たちがDJに求めるものが変わったというか。 |
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T: |
「DJのワナビー・スーパースター化、あるいはDJのエンターテナー化というのは、やっぱりあるでしょう。ここ数年でDJの在り方というのは大きく変わったと思いますよ。悪く言うわけではないけれど、客の“知っている曲”をどんな風にプレイするかがDJのスキルになっている部分もある。実際、それをお客さんも求めているわけだしね。それを良いとか悪いとか言っても始まらない。映画でいえば『パイレーツ・オブ・カリビアン』をヘルツォークやホドロフスキーの作品と比べて批判したところで、そんな批判、意味をなさないでしょう。そういうことですよ。ただ、かつては異質なもの同士が同じフィールドにもっと普通に存在していたような気がします。今は、それが難しい。で、それは、グローバリズムの問題とも関わると思うんですよ、ハナシが突然大きくなるけれど(笑)。やっぱり世界中の都市が同じような雰囲気になっているなかで、世界のどこでも2 many djsのフォロワーなようなスタイルが受けている、というね。オリジナリティーは問われないっていう。それは情報の広まる速度が早くなった、というよりリアルタイムですべてが繋がっている感覚ですね」 |
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── DJというのは、いわゆるミュージシャンよりも敏感に現場の空気を察知でき、表現をすばやくスイッチできる分、好むと好まざるを得ず、そうした傾向に拍車がかかるんでしょうね。 |
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T: |
「こういう時代になってしまったという事実は、事実として認めるしか無いわけで、それがイヤだからって、どんどんアンダーグラウンドな方向に行ってしまうと、広がりが無くなる。でも、やり続けると熱はたまっていくし、それが爆発する時もある。80年代頃まではアンダーグラウンドのシーンで起こったことが、ひとつのサプライズとして表に出ていくという回路があったけれど、今はそれをかなり意識的か、資本を投下してやらないと世の中に伝わらなくなっている。自分としてはそういう事をする役割になるべきかもしれないけれど、それはやらずにいたい、という気持ちもある。見せ方のスキル問題ですね。このアルバムもそうだけれど、広げるために、イージーなキャッチフレーズをつけるのが恥ずかしいというかね。ましてや、他人に説明するために、自分自身をわかりやすく表現するなんてね」 |
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