THINK PIECE > Interview With Kenji Takimi
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まったくもって、明るい話題が聞こえてこない音楽業界を横目に、“今、ダンスミュージック・シーンに大きな変革が起きている!”などと声高に叫んだところで、一体、どれだけの人にとってリアリティのある情報となるのか、じつに心細いのだが、それでも、“今、ダンスミュージック・シーンに変革が起きている!”のは、確かだ。
 
そして、願わくば、この“ダンスミュージック・シーンの変化”というトピックを、自身の実生活になんら影響を及ばさない些末な事象として無視するのではなく「時代の先端にアクセスしようと試みる表現スタイルの変化が、この後に続く世界的な社会構造の変化を先取って映しだしている」というテーゼを半ば冗談としてでも良いから信じた振りをして、今しばらく考えてみて欲しい。
そのうえで、ここに記される彼のインタビューに目を通せば、彼が語っているのは、広義の「クリエーション」あるいは「表現」についての問題であると理解してもらえるだろう。
彼の名は瀧見憲司。
 
 
国内屈指のインディペンデントレーベル「クルーエル」のオーナー/A&Rであり、20年近くのキャリアを持つクラブDJである。
この経歴の意味するところは、彼は常に「様々な制約のなかでクリエーションを続けてきた」ということである。
そしてこのインタビューのテーマとなっている彼の「作品」はDJ MIXによるCD作品として、自らのレーベルではなくエイベックスというメジャーレーベルからのリリースとなる。つまり、クローズされたサークルの中に存在する「レア」な作品ではなく、国内音楽マーケットに普通に流通する「商材」として一般にカウントされるやり方を選んだのだ。
 
そして、もうひとつ。彼の作品は、2007年今日現在を個人の視点で「音楽」で切り取ることで、普遍的な同時代性と作者の強固なアイデンティティを同時に表現したまぎれも無い「傑作」であると断言しよう。
 
滝見憲司
── 3年前にリリースされた『THE DJ AT THE GATES OF DAWN 』と比較すると今作『2』は、より今日的というか、マニアックな選曲には違いないんですが、ダンスミュージックにそれほど親しみがない人でなくても充分に楽しめるスムースなものとなっている印象です。そのうえで、瀧見さんのアイデンティティを感じさせる、『何だ?』というロック的なストレンジ感がアクセントになっています。
 
T: 「聴きやすい部分と“異物感”というか引っかかりみたいなものの同居が、まあ、自分の持ち味ではあると思う。聴いた人になんらかのトラウマを与えたい、というかね」
 
── この瀧見さんらしさは、一方でダンスとロックのミックスがある種のトレンドとなった今こそ、より手応えを感じるものがあるという感覚はありますか。もちろん、「昔からこんなことやってたんだよ」という気持ちも含めて。
 
T: 「望まれているのとは少し違うんだろうけれど、“こういうのもありますよ”という形では、ささる余地はあると思う。いつの時代でも、時代の音のピークポイントっていうのはあって、現在はそれがすごく“ハイ”なところに来ていることもわかっているけれど、それをそのまま自分がやるには“イタすぎ”る。あくまで自分のスタイルのなかで今の現状にリンクする部分で表現したつもりです。現状へのアンチという気分も、当然ありますけれどね」
 
── 現在、巷で言われる「ロックっぽさ」と瀧見さんの「ロック」の違い、あるいは瀧見さん自身が捉える「ロック」とはどういうものですか?
 
T: 「いわゆるロックというのは、音響的には70年代で完成されていると思うんです。その音響的な特性のひとつというのは、低音がそれほど無いってことなんですよ。中音域から高音にかけてがメインで音の歪みが生きていて、ドン!というボトム感は無いんです。一方、90年代以降のダンスミュージックはドン!ドン!という低音の持続とハイのバランスが基本になる。その2つを音楽のフォーマットや音の特性の差を越えて混ぜたり繋いでいって、ひとつの塊、ひとつの作品にしたかった、というのはあります。後、自分を出しつつ、消す、って事ですね」
 
── そうした瀧見さんの方法論的なコンセプトに加え、瀧見さんが切り取った2007年現在の「世界の姿」をサウンドとして表現した、というコンセプトというか、意気込みを今作には強く感じます。
 
T: 「その意味では、新譜ばかりプレイするDJはもちろん、旧譜中心のプレイであってもDJというのは、時代性というか、今の空気を意識をしていないと成立しない行為だと思う。自分自身はそのことを十分意識しているつもりだし、そのうえでの、トレンドみたいなものとの距離感も意識はしていますよ」
 
 

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