THINK PIECE > 伊藤弘×田中知之
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ファンタスティック・プラスチック・マシーンのニューアルバム『FPMB』はその名が示すように、エイベックス移籍後のベストアルバムである。そして、ここに収録された楽曲は田中知之が21世紀に入ってからリリースされたものであリ、この世紀をまたぐ瞬間、田中のキャリアの中で確実に変化があったことを証明するアルバムとなっている。この変化を田中の京都時代からの友人であり、同時にデビュー以来FPMのヴィジュアルイメージを支えてきたグルーヴィジョンズの伊藤弘はどう捉えているのか。ともに「アマチュア」から「プロフェッショナル」へと成長した2人が考える「クリエイターの成熟」とは?  
伊藤 弘
デザイン・グループ、グルーヴィジョンズ代表。CDジャケットから企業ブランディングまで、グラフィックやムービーを中心に様々なデザインワークを展開している。
http://www.groovisions.com/
 
 
田中知之 (以下:T)

「このベストアルバムは21世紀に入ってからの作品から選びました。20世紀から21世紀になって心機一転というわけでもないけれど、僕の中でもひとつの区切りがあったのは、間違いないんです。かつての僕は、今でいうところの“ラウンジ”っていうサークルというかムーブメントのなかに確かに存在していたけれど、ちょうど2001年にレーベルを移籍して最初にアルバムを作るときに、いわゆるラウンジ、60'Sやボサノバってキーワードで括られるような音楽は封印しようと思ったんです」
 
───デビュー当時のFPMあるいは、田中さんはそのラウンジ的なモノを音楽だけでなくアートワークやイメージでも追求していた感がありますよね。
 
T: 「ある種、“アートワーク、命!”みたいな感性ってありましたよ。やっぱり小西(康陽)さんから学んだ部分も多いし。ジャケットのグラフィックから仕様、ポスター、販促物までトータルに世界観を表現するというのは、音楽と同じくらい、あるいはそれ以上に真剣だった。2ndアルバムなんてバーナー・パントンを起用しているわけだからね。ただ、そうした考え方も『beautiful.』以降変わってきて、アートワークもコンセプト一発、アイディア一発というわけにはいかなくなって」
 
 
伊藤弘 (以下:I)

「田中さんのハナシとダブるんですけれど、ちょうどその頃からグルーヴィジョンズのデザインも今までの方法論では成り立たなくなってきたんですよ。記号的な断片をエディットすることでデザインが完成させるということができなくなってきたんです」
T: 「音楽でいえば、大ネタのサンプリングにリズムをくっつけてトラック完成、みたいなイージーな手法が通用しなくなってきた時期でもある。21世紀以降ですよ、それ」
 
I: 「そうそう。前は『アレ面白い、やろう』みたいなアイディア一発で決まっていたのが、急に出来なくなったんですよね」
 
 
T: 「昔は、『何が今“寝かせ頃”か? 何が今“ハズし”になるか?』みたいな話ばっかりしてたんですよ。でもそれは90年代までのやり方だったんじゃないかな。今は『何が寝かせ頃か?』のジャッジが無意味になって『何がカッコいいか』のコンセンサスなんて無くなってるんですよね」
 
 
I: 「その感覚は音楽とデザインの両方に通じると思いますね。田中さんとは年に何回か、こんな感じでミーティングしているけれど、その都度『音楽とデザインを巡る状況は似てるな』っていつも思うんです。僕らにしてもアウトプットの見た目はあんまり変わってないかもしれないけれど、そこに至る過程や考え方は10 年前と今では凄く変わった。考える時間がもの凄く増えましたよ」
 
T: 「考えないと前に進めないもんね、今。僕自身は自分にもっとハッキリしたアイディアがあって、『伊藤さん、コレです!』って持っていけないことを、申し訳なく思ったりもするんですけれど、とりあえずミーティングでグルーヴィジョンズに会って、そこで、自分のアイディアと一緒に疑問や不安も告白して(笑)、そうやって少しずつカタチを作っていくやり方でないと出来ないし、そういうやり方が楽しくなってきて(笑)」
 

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