クルーエル・グランド・オーケストアラのピアノ室内楽から、LOVE TAMBOURINESの美しくもエモーショナルなソウルバラッド、サティ『ジムノペディアNo1』の藤原ヒロシによる抑制の利いたダブバージョンを挿み、No Maのネオアコ感漂う哀愁ボサ・インスト、初期カヒミ・カリィの持つイノセントな魅力が堪能できるA・ジルベルト『Take It Easy My Brother Charlie』のカバー、畠山美由紀の艶やかなヴォーカルと小島大介の幻想的なスチールギターが印象的な松任谷由実『Typhoon』のカバーと、実に多彩な音楽性を展開させながら“Mellow”という言葉から引き起こされる情感をなぞるように、このアルバムはゆっくりと進んでいく。 |
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そしてラストは藤原ヒロシと小島大介によるユニット、SPECIAL GUESTによるボブ・マーリー『Waiting In Vain』のカバー。現在のシーンの動向を顧みる気配など全くないアコースティック・ギターによるシンプルなアレンジに藤原のオネストなボーカルが重なるこの楽曲は装飾的なサウンドや類型的なアレンジの曲ばかりがリリースされる今、実に新鮮だ。 |
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「これ、実はFILのオープニングライブのときのリハーサルの音源。歌うこと自体は部屋でギターを弾きながらいつもやっていたことなんですけれどね。前にエリック(・クラプトン)に『ヒロシも自分で歌いなよ』って言われていたんですよ。エリックも最初は自分で歌うのがイヤだったらしくて。それがソロになって仕方なくボーカルをはじめたら歌うことが好きになったらしい(笑)。でも、そのときは人前で歌うなんてまるで考えてなかったんだけど、最近はエリックが言っていたことが、わかるような気もしますね」(藤原) |
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この『Crue-L Mellow』は、それぞれのスタンスで音楽と向き合うアーティストたちの、それぞれ異なるモチベーションから生まれたであろう楽曲たちが集まり、ひとつのストーリーを紡ぐように1枚のアルバムとなっている。
それはクルーエルが育ててきた“文化力”の証明であり、“インディペンデント”であり続けることの正しさの証明なのである。 |
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