THINK PIECE > Crue-L Mellow
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言葉本来の意味での“インディペンデント”を貫き通す国内屈指のレーベル、「クルーエル・レコード」。このクルーエルが15年以上に渡って、シーンの最前線にそのプレゼンスを保ち続けているのは、レーベルオーナーでありA&Rである瀧見憲司の美意識と哲学が、決して揺るがずに、それでいてアップデートされながら、ひとつの“文化”を伝えているからだろう。
そのクルーエルから新たなレーベル・コンピレーションがリリースされる。
題して『Crue-L Mellow(クルーエル・メロー)』。
http://www.crue-l.com/
 
 
「クルーエルのカタログからラウンジ的な雰囲気の曲を(藤原)ヒロシ君と選んでコンピを作ろうというアイディアで始まったのがこのアルバム。で、出来上がったものを聴いて、ヒロシ君と考えて“Mellow”というタイトルに。内々でのサブタイトルは『クルーエル・アダルト』(笑)。実際、大人っぽいものになっていると思う」(瀧見憲司)
 
PORT OF NOTES、カヒミ・カリィ、MUSEUM OF PLATE、LOVE TAMBOURINESなど、クルーエルの歴史を築いてきたアーティストたちの楽曲はもちろん、No Ma、SPIKEWAVEといった新鋭アーティストの楽曲をも網羅し、様々な表情を持つクルーエルのなかでも、本作ではとりわけノーブルな“オトナ”の世界を表現している。
 
それは、アルバム1曲目、クルーエル・グランド・オーケストラによるサティ的なピアノ室内楽を耳にした瞬間から自然と理解できるだろう。そして、この静謐で知性的なアプローチもまたクルーエルの持つ“文化”のひとつであるということに気づかされるはずだ。
 
「1曲目のピアノのインスト曲も音色が豪華じゃないのがいい(笑)。クラシック音楽の要素もあって、でも、ウィンダムヒルみたいな音ではなく、もっとチェリーレッドとかニューウェーブっぽい雰囲気。そこがクルーエルらしさだと思うんです。今回のアルバムを通して改めて思ったのは、クルーエルはインディペンデントだな、ってこと。メジャーではあり得ない音楽、メジャーでリリースしても埋もれてしまいそうな音楽をクルーエルは、世に送り出そうとしている」(藤原ヒロシ)
 
 
クルーエルが、こうしたある種の“文化”をインディペンデントだからこそ、持ち得ているというのは瀧身自身も十分理解している。そして同時に、その“文化”がそれだけで価値を持つのが難しい時代になっているという認識も。
 
 
「今、日本では、文化としての価値、純粋な音楽的な価値というものを上手く伝えるのが難しくなっていると感じる。もはや、インディペンデントである、アンダーグラウンドであるということが、そのまま評価の対象になるわけではないでしょう。そもそも、インディペンデントという言葉の本来の意味が忘れられてしまっている。だからこそ、インディペンデントという言葉本来の意味、あるいはその言葉に変わる何かを築いていきたいと思う。この『Crue-L Mellow』は、もちろん自分のレーベルのコンピレーションではあるけれど、そこを差し引いて客観的に聴いても、“十分、聴ける”内容だと思う。やっぱり、うちにはこれだけの蓄積があるんだというのは再認識できた。ただ、これを“世に問う”場面になったとき、どう伝えたらいいんだろうという思いもある」(瀧見) 
 
瀧見らしいシビアな現状認識であるが、とはいえ今回のアルバムはクルーエルのアイテムのなかでは、圧倒的に聴きやすく、理解しやすいアルバムとして完成している。
 

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