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そういう発想は凄くプロデューサー的ですよね。それで、その音を実現するために、大友さんやヤン富田さん、ジム・オルークと仕事したんですね? |
K: |
「私の声はとても小さいので、ライブだとバランスをとるのがとても難しいんですよ。そのことに悩んでいた頃に、ジャズや実験音楽に出会い、そこに足を踏み入れた途端、今までひっかかっていた『声の小ささ問題』が解消された。だから今回のアルバムでは、ジム・オルーク、ヤン富田さん、大友さんといった個々のタイプはまったく違いますけど、音楽以前の“音”というものを追求している方々にお願いしたんです」 |
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カヒミさんがテレビを見て閃いたことが、1枚のアルバムとして作品になる。そのこと自体が凄いと思います。しかも、あらゆる音楽を取り入れながらもちゃんとポップミュージックとして聴ける音楽に仕上げている。ご自分でも当初意図していたものは達成できたと思いますか? |
K: |
「そうですね。ただ、もっとレコーディングを続けて、いろいろ試したかったんですけど、CD1枚では収まらなくなってしまうので(笑)。今も継続して研究中ですね」 |
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大友さんや菊池さんに呼ばれてライブパフォーマンスをすることで、ボーカリストとして変化した部分などはあるのでしょうか? |
K: |
「自分のことを違う場所で見れるようになったというか。客観的に自分のことを見過ぎるのも良くないときがあるとは思うんですけど。そういう意味では立ち位置をちょっとだけ変えて見れるようになりました。あと逆に昔よりもすごく主観的に感じられるようになったというか。それが両立している感じはありますね」 |
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1人のミュージシャン、ボーカリストとして表現力が増しているんだと思います。ボーカリストとしての表現力というか、自負心を今回のアルバムに還元したりしているのかなと。 |
K: |
「どうですかね。あまり考えたことないですね。うーん……無意識のところではあるかもしれないですね。歌を歌うっていう行為はスポーツと似ていて、体が楽器なので、やっぱり歌っていると筋肉とかが変わっていったりする。すごく集中すると、なんにも頭で考えてないんだけと客観的になったり、相手の求めるものやその先みたいなものが見えるような感じがする瞬間があるんです。だから他の方と何かやるときって、シンクロするのかもしれません。あと、ライブにたくさん参加して鍛えられたというか、気付かないうちにジムに行ってトレーニングを積んでいたような感じがします」 |
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話が戻るんですけど、CRUE-Lコンピレーションにはご自身の昔の曲が入っています。鍛えられた声や耳を持つようになった今、昔の曲はどういう風に聴こえますか? |
K: |
「大人になった、のかなぁ。子どもの頃に私が歌っているのを父親が録ったテープがあるんですけど、ほんとにディズニーの大合唱みたいな感じだったんですよ(笑)。それを20歳くらいのときに聴いて、ネズミみたいだなって思っていたんですけど。今、また大人になって昔の曲を聴くとネズミに聴こえたりして(笑)。ただ、やっぱり愛着がありますね。」 |
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ちなみにCRUE-Lも大人になったなと思いましたか? |
K: |
「はい、思いました。大きくなりすぎて把握していない部分もありますし」 |
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CRUE-L=瀧見さんということであれば、瀧見さんも大人になりましたか? |
K: |
「はい(笑)」 |