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短い丈のジャケットにタイトなパンツをローライズ、プラス極細タイといういわゆるディオール オムなスーツスタイルも一応は存続したものの、すべてが一歩前に進んだエディのスタイリングだったように感じる。
これまでのスーパー・スリムなデニムに代表されるようなロック・テイストのカジュアルや、エレガントをカジュアルに落とし込んだエディ・スリマンのスタイル、あるいは先季2006S/Sにみられたブリティッシュなニュー・ウェイヴ〜モッズ・スタイルは、ここには一切姿を現さなかった。
Tシャツやデニム、スニーカーというある意味でここ数年のディオール オムの新しいスタイルを象徴してきたアイテムとは一切無縁のスタイリング。あるいは意識的に外されているかのようなスタイリングである。かつてのサン・ローラン時代のエディ・スリマンの影さえ思い起こされる新しいエレガンスを装ったフォーマル・スタイルである。
そして、なんといってもモデルの様子もこれまでとは一変していた。ロック・スターのようなロング・ヘアの若者は皆無、きっちりとヘアをとき分けたフォーマル・スタイルで、お行儀の良い正統派の美男子スタイルが取り揃えられていたのである。 |
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最後のモデルがゆっくりとランウェィの彼方に消えて行った後、鳴り響いていた音は止まる。再び真っ暗な会場の中、拍手やら喝采が飛び交ったが、しばらくの間をおいて、静寂をたたえるかのようにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる三重奏が始まる。
しずかにどよめきが沸く仄暗い会場、そんな中でのフィナーレは、全員がスワローテイルのジャケット、カマーベルト、白いドレスシャツにクロスタイというスタイルでゆるやかに行進。どよめきとともに静かな感動を喚び起こしたのである。
最後に大きな拍手に促されるように登場したエディ本人は、遠く闇の中に照れくさそうに会釈をし、さらなる拍手と喝采を浴びた。
スーパー・エレガント、スーパー・クラシックなエディ・スリマンの完全復活。これはまったく新しいディオール オムなのか、あるいは一番最初のコレクションに立ち返りディオール オムを再定義をし直したコレクションであったのだろうか…。ともかくクリスチャン・ディオールというメゾンの格式をたたえた、エレガントなディオール オムの再生を強く感じさせられたショーであった。 |
Text&Photo:Shoichi Kajino |
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