今年のフランクフルト・ショーは「ハイブリッド・ショー」の様相を呈し、新たなスーパーカーの登場はほぼ皆無。その後の東京モーターショーでは「ブガッティ・ベイロン16.4」がついに正式に発表され、1億6300万円というプライスがアナウンスされて話題となった程度…。
ここからも分かるように実は今、超高級スーパーカーはひと時代を終えつつある。理由は自動車の最大市場であり、超高級スーパーカーの最大市場でもある米国の事情による。
ご存じのように米国では今年、原油高の影響を受け、ガソリン価格がかつてない値上がりを見せた。こうした社会的背景が超高級スーパーカー(やSUV)の需要を減速させた。
事実少し前に登場した5000万円超のスーパーカーであるメルセデス・ベンツSLRやポルシェ・カレラGTは、既に熱狂的なセレブの元へ行き渡ったためタマがだぶつき気味で、今ではお金さえ出せば簡単に探し出せる状況だという。
加えてアメリカでは先の原油高で、大排気量/大馬力のクルマはイメージが良くない。事実アメリカではアメリカンV8以外の大排気量は少しずつ敬遠されつつある。同時にアメリカではブラッド・ピットやレオナルド・ディカプリオなどのセレブがハイブリッド・カーの「トヨタ・プリウス」を愛用することやLOHASといった潮流により、環境への意識はさらに高まりつつある。
一方欧州でも環境に優しいディーゼルが注目され今や乗用車の5割がディーゼルにならんとする状況。実際に欧州メーカーのほとんどは最上級サルーンにディーゼル・エンジンをラインナップするほど。つまり今世界中が自動車の環境について考えている。そうした世の流れからすると、超高級スーパーカーは厳しい立場にあるのが実際だ。
が、しかし。スポーツカーそのものがもともと限られた人のためのものであり、スーパーカーや超高級スーパーカーともなると超希少な存在。だから当然ながらこれらを手にできる人の数は、世界中で自動車を使う人の数からすれば微々たるものでしかない。そう考えると大排気量/大パワーのクルマでも環境への負荷はほとんどないともいえる。つまり時代は自動車に厳しいが、現状では「選ばれた人」だけがスーパーカーを堪能できる状況。事実フェラーリやポルシェは、そうした状況でも企業として優秀な成績を上げ成長し続けているほどだ。
また同時にディーゼルやハイブリッドのスーパーカーも当然のように考察がなされている。そしてこれが完成すると、環境負荷の少ない夢のようなスーパーカーも誕生するのだ。
もっともセレブは忙しく、日常茶飯事スーパーカーを乗り回すわけでもないため、今後もスーパーカーが直接環境の矢面に立たされることもないだろう。そう考えるとスーパーカーというのは今後ブームにはなることはないが、絶滅することもまた絶対にないと思える。むしろ限られた人のためだけに与えられた、極上の愉しみとして扱われるのではないか? |