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THINK PIECE

大沢伸一 × YOSA

「“存在の仕方”もクリエーションの一つ」

16 4/27 UP

photo: Shoichi Kajino
interview: Tetsuya Suzuki

Y
「ダンストラックはざっくりと大まかに言ってしまえば、初めの30秒から1分間はDJが繋ぎやすいようにリズムのみで構成して、徐々に音数を増やしながら途中のブレイクで抜けて、その明けでまた音数が戻るといった完成されたパターンがあるじゃないですか。それはそれで様式美だと思うし、事実それはクラブという場所では抜群に機能します。ただ制作する側として、その型にはまったルールの上だけで曲を作るということがつまらなく感じるようになったんです。予定調和感というか。それは今のクラブという空間や、パーティそのものの在り方自体にも同様に感じることなのですが」
O
「そこはYOSA君の世代が壊していかないといけない部分ですよ。僕みたいなおじさんでも、今のクラブやクラブミュージックの在り方に対して抗っていますから。毎週末集まってシャンパンを開けて、ナンパしているだけの場所がクラブじゃないですよね。DJもパーティも、みんなある一定のクオリティは保っているかもしれないですけど、どれもあまり変わりがないという意味でほとんどが”普通”ですよね。そういう凝り固まった部分は志を持った人達が壊していかないと。色んな実験をして、もっとドキドキする空間に変えていきたいですよね。実はこの前、その下調べじゃないですが、都内の小さなバーやクラブを一晩で7〜8軒まわったんです。そのどこも良い音楽が鳴っていて、小さいながらもシーンがあって、すごく面白かったんですよ。今後は自分もそういうところで積極的にやっていきたいという気持ちも生まれたりして。今の自分は隠居する自信もないし、かといって自分を痛めつけながらマスに向かうのは自分のポリシーに反するんです。自分なりの存在の仕方を考えることもクリエーションの一つとして考えるのであれば、

自分にフィットする場所は自分で作っていかなくてはならないと思いますよ。そういう意思を持った人が増えることで、シーン全体の活性化に繋がるとも思いますし」
Y
「今の自分で言うと、やはり大きな場所でできるだけ多くの人の前に対して自分の音楽を届けたいという気持ちがあります。ただ、大沢さんもおっしゃったように、マスに届けるために自分の音楽性を変えるということはあり得ないので、自分が持っている感性の中で、可能な限り多くの人に届ける努力はしているつもりです。まだまだこれからですが、その一環が今回のアルバムだったり、パーティで言えば自分がSOUND MUSEUM VISIONでやっている”Modern Disco”だったりするんです。それは自分にとっての居場所作りでもあるし、そこが盛り上がることでシーンに対する刺激にもなればいいなという気持ちもあります」

 

──
アルバムでは、多くのラッパー/ヴォーカルがフィーチャリングされていますが、歌詞の内容に関してディレクションはされているのですか?
Y
「自分が表現したい世界観を音楽だけでなく言葉でも表現したいと思っていたので、参加していただいた方全員に曲ごとのテーマはお伝えしました。例えば”夜明け前”という曲は僕が出したテーマがそのまま曲名になっています。今僕は27歳なのですが、自分が好きなことを貫いて続けて花開きはじめる人と、逆にそれよりも大切にするべきものを見つけて新しい生活をはじめる人とで、分かれ道になる年齢だと思うんです。どちらが正しいとかではなくて、その両者にとっての新しいステージの幕開けと、そこに漂う不安や希望を伴う哀愁を表現したいと思って”夜明け前”というテーマにしたんです。これはこのアルバム全体のテーマにもなっていますね」

O
「その27歳の夜明け前感、分かるわ〜(笑)。僕も27歳の時はすごく悩んでいました。僕はYMOに憧れて音楽をはじめたので、坂本龍一さんがその時々の自分の歳に何をしていたかというのをずっと追いかけていたんですよ。それで、僕の中では坂本さんは28歳で音楽家としてのブレークポイントが迎えたという認識だったので、27歳の時の僕はとにかく28歳までに何かになっていなければと必死にもがいていたんです。坂本さんのキャリアには全然追いついていなかったのですが、僕はその頃にMondo Grossoをソロでやりはじめて、初めて日本人のアーティストに楽曲を提供し出すようになったんです。それがUAやCHARAだったのですが、そこから僕のキャリアも変わってきたんですよ。だから27歳、28歳というのは色んな人にとって大切な時期だと思いますよ」
Y
「僕が初めて日本のダンスミュージックを聴いたのはMondo Grossoの『Next Wave』だったので、27歳のタイミングでこうやって大沢さんとお話させていただけて本当に光栄です。大沢さんは最近Mondo Grossoの活動再開を宣言されて、僕としてもものすごく楽しみにしているのですが、個人名義とMondo Grosso名義では制作の手法は異なるのですか?」
O
「まずMondo Grossoには裏切りと変化の歴史があって、それを鑑みると過去のMondo Grossoになぞらえたものに終始するのはダメだし、かといって僕が個人名義でやってきたダンストラックのようなものに特化してもダメ。制作の手法というよりもMondo Grossoはコンセプトでもあって、歴史もあるし、かかってくる負荷が個人名義とは全く違うんですよ。13年振りの活動なので、いざ曲を作りはじめた頃はなかなか答えが見つからなかったのですが、続けているうちに見えてきたものがあって。今はまだ言えないですが、今回も良い裏切り方を見せられると思いますよ」

 

YOSA『Orion』

OMAKE CLUB
1,500円[税抜]
発売中
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iTunes

 

YOSA『夜明け前 feat. ZOMBIE-CHANG & SALU』

incl. Shinichi Osawa remix
OMAKE CLUB
7inchレコード 2,000円[税抜]
2016年5月28日(土)発売
Manhattan Records