菅付雅信『物欲なき世界』
早くも増刷決定!! 『物欲なき世界』を通して考える
消費が飽和した後の世界
15 11/10 UP
photo: Shoichi Kajino
interview: Tetsuya Suzuki
text: Kohei Onuki

- 「今作はホームグラウンドであるカルチャーから離れた内容なので、次作では、思い切りカルチャー寄りのものを書きたいとも思います。また、『中身化する社会』も『物欲なき世界』も、ファッション業界の中で、『衣服を売るだけでは立ちいかなくなる』と理解している人たちからは良い反応を受けます。ただ一方で、『ファッションは衣服ガーメントの産業だ』と考えている人たちからはこの本も反発を受けるでしょうね(笑)。ただカール・ラガーフェルドの有名な言葉があるんです。『ファッションは衣服のことではなく、変化のことだ』と。僕はこの言葉こそがファッションの神髄を言い表していると思いますよ。そして最も今変化しているのは、衣服の作り手ではなくて、衣服を買うことに疑念を持つようになった消費者の意識なんです」
- ──
- ファッション業界における、『中身化する社会』や『物欲なき世界』への反発には二種類の形があると思います。一つは『ファッション=服は絶対的な必需品、コモディティなのだから、

- なくならない』という人。もう一つは『ファッションは衣服の形を借りた想像的なクリエイション、アートだ』という人。後者のクリエイティブ志向のファッション関係者、また、それを消費する人は社会が中身化しようが、物欲なき世界が来ようが、表現としてファッションを作り、消費し続けるのではないでしょうか。
- 「そうですね。ただ、中産階級の特に二十代の可処分所得が減少している中で、ソーシャルメディアの発達で若者の自己表現ツールが増えた。その自己表現ツールが増えた中で、ラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドの洋服を買い自己表現するのはコスパが悪い、という一般的な消費者の健全な意識は、作り手側も意識しなければならない。勿論洋服をたくさん買ってそれが格好よく似合う人たちもいるし、シーズン毎に高い服を買い換えるのは、それは今後も残っていく高等遊民な趣味なのだと思いますよ」
菅付雅信(すがつけまさのぶ)
編集者/グーテンベルクオーケストラ代表取締役。1964年生。『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』の編集長を務め、出版からウェブ、広告、展覧会までを編集する。書籍では、朝日出版社「アイデアインク」シリーズ、電通の「電通デザイントーク」シリーズ、平凡社のアートブック「ヴァガボンズ・スタンダート」シリーズを編集。最近の編集物では上田義彦写真集『A Life with Camera』(羽鳥書店)がある。著書に『はじめての編集』『中身化する社会』等。またエディターのための文具&バッグブランド「エディターズリパブリック」(サンスター文具)を企画編集。下北沢B&Bにて「編集スパルタ塾」を開講中。多摩美術大学非常勤講師として「コミュニケーションデザイン論」を担当。
菅付雅信『物欲なき世界』
平凡社
1,400円[税抜き]
販売中