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THINK PIECE

Peter COFFIN

ヨコハマトリエンナーレ2011で展示中の
ピーター・コフィンが自身の作品を解説

11 8/26 UP

text:Naoko Aono

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日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)では"暗闇からカットされたブドウやオレンジ、パイナップルなどのフルーツが次々とこちらに向かって飛んでくる"、というビデオ・インスタレーションを展示されています。
「あの作品は僕も気に入ってる。ごく単純だけど、人々の精神に大きな影響を与える"豊潤"とか、"無限"といった観念がある種のテーマになっているんだ。ギリシャ神話がもとになった、中から無限に食べ物が出てくる羊の角という図像からインスピレーションを得ている。フルーツはエネルギーや力の象徴。僕たちは普段忘れているけれど黙っていても食べ物をどんどん作ってくれる、自然のパワーってすごいと思う。フルーツが次々と飛んでくる映像は、その豊潤な自然の恵みがモチーフになっているんだ。この映像は宇宙船で、宇宙を移動していくような感じにも見える。星や惑星がきれいなフルーツになっていて、その間をぬって進んでいくような感じだ。宇宙は自由な動きや存在、思考を象徴していて、日常とか常識とか現実といった”重力”から逃げ出して夢を見よう、っていう意味。みんなそうやって"飛ぶ"ことを忘れて、いつも同じ視点からものごとを見ている。ときにはそうやって飛び上がって空から自分を眺めること、客観的な視点から日常を見つめることが必要だと思うんだ」

Untitled (Greenhouse) © Peter Coffin, 2011.
Live performance by ooioo, 6/8/2011

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今回は出品していませんが、UFOをモチーフにした作品がありますね。
「これはちょっとセンシティブな問題だけれど、たとえば政府の発表を信じるか、ということとUFOの存在を信じるか、ということには共通したものがあると思うんだ。ユングが社会情勢とUFOとの関連を調べていておもしろいことを言っている。戦争のような、社会的ストレスが高い時期にはUFOの存在を信じる人が増えて、平和な時期には少なくなる、というんだ。ストレスがたまってくると恐ろしい現実から逃げ出そうとする心理が働く。他人や、戦争への恐怖心が関係している可能性もある。僕はUFOそのものに興味があるわけじゃないし、UFOが実在するかどうかを問題にしているわけではない。僕が興味を持っているのはこういった人々の心理状態だ。結局のところ、こういうことがアーティストの役割なんだと思う。つまり、いろんな方法で見えないものを見えるようにすること。これは別に僕に限ったことではなくて、印象派やフォーヴィズム、キュビスム、シュルレアリスムなどはみんな、世界の中で僕たちが見ていないものを見せるための方法論だ。時間とか、無意識の下に隠れている欲望とか……。こうして見えないものを見えるようにすることで、観客は自然とそれまで考えもしなかったことを考えるようになる。植物はどんな音楽が好きなのか? とか、そもそもこの作品は何のために作られたのか? とか。アーティストがコンセプトやアイデアを考え、観客がそれを学ぶ、というヒエラルキーを僕は信じていない。ある特定の考えを示したり、そう考えるように観客をコントロールすることがアーティストの役割ではない。僕の作品はそこから観客がそれぞれのアイデアを生み出し、発展させていくためものだ。オブジェを作ると、そこで行き止まりになってしまうから、僕はオブジェを作るつもりはない。見た人が何かを考えるためのトリガー(引き鉄)、きっかけになるようなものを作りたいと思っている。作品と観客との間で化学反応が起きて、新しい物質が生まれるようなアートを作りたいんだ」

 

ヨコハマトリエンナーレ2011
OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?-

会期: 2011年8月6日(土)~ 11月6日(日)
休場日: 8月、9月の毎週木曜日、
10月13日(木)、10月27日(木)
会場: 横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)、
その他周辺地域
開場時間: 11:00~18:00 ※入場は17:30まで
ヨコハマ創造都市センター(YCC)会場は、11:00~19:00

特別連携セット券<お得なセット券>
当日: 一般1,800 / 大学・専門学校生 1,200円 / 高校生 700円
ヨコハマトリエンナーレ2011
当日: 一般1,600 / 大学・専門学校生 1,000円 / 高校生 600円

《無題(グリーンハウス)》のなかで植物に音楽を聞かせる演奏シリーズ
ピーター・コフィン「ミュージック・フォー・プランツ」
9月17日(土)ジム・オルーク 17:30~
10月1日(土)蓮沼執太 17:30~
10月29日(土)テニスコーツ 17:30~
ヨコハマ創造都市センター(YCC)
先着100名
※《無題(グリーンハウス)》は作品として会期中常設展示(ヨコハマ創造都市センター)されていて、音楽が流れています。生演奏のイベント「ミュージック・フォー・プランツ」は、会期中にあと3回のみの予定です。

横浜トリエンナーレ組織委員会
[問] ハローダイヤル 03-5777-8600(8:00~22:00)
公式サイト: http://www.yokohamatriennale.jp/