11 10/05 UP
photo&text:Shoichi Kajino
続いて現れたDJユニット「CARTE BLANCHE」。DJ MEHDIとRITONによる仏/英・黒/白を結んだ強力なタッグのチームである。
しかし、今、彼らのステージを回想するのは正直とても辛い。多くの方もご存知の通り、このショーで来日してからほんの一ヶ月後の9月の半ば、DJ MEHDIは不慮の事故によって帰らぬ人となってしまったのである。急逝の知らせを聞いてからも、本当に信じられないし、失った才能の大きさを考えると何の言葉も出なくなってしまう。
MEHDIは全身白、RITONは全身黒という出で立ち。途中からローラースケートで登場する白い衣装の黒人女性、黒い衣装の白人女性のダンサーが一糸乱れぬダンスで盛り上げるなど、白/黒のコントラストをうまく使った演出。そして何より、もはや攻撃的とも言えるくらいにハッピーなムード全開でオーディエンスを踊らせながらの煽り具合は、他の追随を許さなかった。
DJ MEHDIの不在の無念さを一番知っているのは、実際この夜、彼らのこのステージを目の当たりにすることが出来たオーディエンスだろう。今はただ感謝とともに安らかに眠れと祈るしかない。
時間も深まった深夜、セットチェンジを経て、高い台座の上に光臨したのはSEBASTIANだ。夏前に待望のデビューアルバム『TOTAL』をリリースしたばかりのED BANGER最右翼ともいえる彼は、このステージのほんの数時間前に東京に到着したという。フランスの三色旗を背に高々と拳を挙げ「VOTE SEBASTIAN!」と呼びかける。来年行われるフランス大統領選挙をモジり、政治的思想さえ伺わせながら茶化したようなヴィデオ・アートとシンクロして、自らのアグレッシヴなトラックを次々ミックスするSEBASTIAN。やはり静かにヴァイオレントだ。
圧倒されそうになるその映像と音の前で、SEBASTIAN本人は、ずっとタバコの煙をくゆらせながら、手を宙で遊ばせる。その様はどことなく往年のゲンスブールを思わせるが、本人に問いただすも「確かにゲンスブールは好きだけど、それを意識したつもりじゃないんだ」と煙に巻かれてしまった。そして最後は、演劇じみたと言ってしまいたくなるほどの壮絶な爆音とオチとともに幕を閉じた。
まだ会場の他のステージではライヴも行われていた夜の始まりから、空が明るくなるまで続いた ED BANGER NIGHT イン SUMMER SONIC。幕張の巨大なステージの上の数時間に、いくつもの奇跡的な素晴らしい瞬間が訪れたのを目撃した。
意外にもその音やキャラクターは、結構異なるアーティストたちなのに、とても強い結束力のあるED BANGER。あらためてこのレーベル、あるいはそれを束ねるBUSY Pという素晴らしいボスの求心力、そして包容力を見せつけられたような一夜であった。
そして繰り返しになるが、今は失われてしまった愛すべき偉大な才能DJ MEHDIを長年留まっていたパリのアンダーグラウンドから表舞台に引っ張り上げたのもED BANGERであった。この夜の出来事は、僕ら日本のオーディエンスにとって、彼のビッグ・スマイルとともに永遠に記憶されることだろう。
この記事の最後にもう一度ビッグ・シャウトを送りたい。ありがとうDJ MEHDI!