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THINK PIECE

DENNIS MORRIS

写真家デニス・モリスが切り取ったパンクミュージックの始まりと終わり

11 3/30 UP

photo:Kentaro Matsumoto text:Takeshi Kudo (Rocket Company*/RCKT)

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デニスさんは彼らの写真を撮るだけでなく、ネーミングからロゴデザインまで、クリエイティブ全般に関わっていたと伺いました。PILの革新的なコンセプトとは、具体的にどのような部分に表現されていたのでしょうか。
「バンド名からロゴデザイン、アルバムカバーのコンセプトまで、僕らはただ、やりたいと思ったことだけをやり通してきたんだ。周りのバンドが当たり前にやっていたことは、あえてやらないようにした。世界中がこんな経済状態の今だからこそ、求められているのはフレッシュなアイデアだと思う。それを生むのは、誰だろうが何歳だろうがどこにいようが関係ない。自分のアイデアを信じて、確信を持ってやり通すこと。そうやって生まれた表現は、すべての偉大な音楽、アート、ファッションにも通じて、タイムレスなものだと思っているよ。だからといって当時と同じ音を出せばいいのかいうと、もちろんそうではなくて、そのときPILが持っていたメンタリティーを感じ取ることが大事なのさ」

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ところで、これまで写真の被写体はミュージシャンが多いですが、被写体に一貫して求めているものは何ですか?
「強いソウルを持っている人であれば、誰でも魅力的だよ。"生かされている人"ではなく、"生きている人"。元をたどれば、私が写真家として最も影響を受けたものは、ルポルタージュ写真なんだ。だから、私がバンドを撮るときは常にリアルなドキュメンタリーとして撮っている。例えばピストルズに関しても、びしっとポーズを決めて撮った写真は一枚もなくて、ただただ、彼らの自然な姿を切り取っていただけ。奇妙な話だけど、そうやって撮り続けていたら、彼らが次にどんな動きをするのかが、わかるようになってきたんだ。だからいつも次の動きを想像して、捉えたい瞬間を写真に収めることができた。ボブ・マーリーにしても同じで、ポーズを決めて撮ったことは、ただの一度もない。僕の写真というのは、つまり、その瞬間を切り取る作業なんだ。素晴らしい写真というのは、たとえ10年前に撮られたものだとしても、その写真を見た瞬間、当時のすべてが鮮明に蘇ってくるものさ。そのとき流れていた音楽、会話、匂い、すべてを思い出させてくれる。それが僕にとってのGreat photographなんだ」
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どうやったら、そのような一瞬を逃さずに、切り取ることができるのでしょうか。
「カメラは根本的に、人を意識させてしまう機械。レンズを向けた瞬間、たいていの人間はカメラを意識してしまう。だからまずは被写体ととにかく話すのさ。ときにはゲームをしたりしてね。そうやって、私が横で何をしているかなんて気にならないくらいに被写体との距離を縮めていく」

 

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あなたの作品の中には、誰もが一度は見たことがあるような世界的に有名な写真が含まれています。先ほど話していたように、もともとはパーソナルな瞬間を切り取った写真が、巨大な公共性を持つ理由とは何でしょう。
「素晴らしい写真というのは、被写体の内面までをも写し出した写真。被写体を知らない人でも写真を見れば、写っている人がどういう人なのかが分かる写真さ。アートでもファッションでも、同じことが言えるよ。もし、君が素晴らしい洋服を着たら、袖を通した瞬間、それが正しいものだとすぐにわかるはずだ。それはつまり、作品を通して向こうの世界とつながったということ。そんなふうに世界が広がり、結果、人と人とが次々つながっていくことが私の望みなんだ」

 

©Dennis Morris
www.dennismorris.com

デニス・モリス写真展「A Bitta PIL」

デニス・モリス写真展「A Bitta PIL」
会場: パルコファクトリー(渋谷パルコpart1・6F)03-3477-5873
会期: 2011年3月18日(金)〜4月4日(月)
10:00 – 21:00(入場は閉場の30分前まで・最終日は18時閉場)
※営業時間は変更になる場合がございます。詳しくはパルコHPにてご確認下さい。
入場料: 一般300円・学生200円(小学生以下無料)
主催: パルコ
後援: moussy Tee Dee
企画制作: パルコ RCKT/Rocket Company*
http://www.parco-art.com/

デニス・モリス写真展「A Bit more PIL」

会場: ROCKET(渋谷区神宮前6-9-6)03-3499-1003
会期: 2011年3月18日(金)〜4月4日(月)
12:00 – 18:00
入場料: 無料
http://www.rocket-jp.com/