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THINK PIECE

KENTO MORI

マドンナも認める世界的ダンサー、
ケント・モリが捉えるダンスの形

10 8/10 UP

Photo:Takeshi Hamada Text:Takeshi Kudo, Satoko Muroga[RCKT / Rocket Company*]

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自分のクリエイティビティを追求する一方で、仕事としては、ほかのダンサーとの激しい競争を強いられる。本当にやりたいピュアなものとクライアントから求められるものは両立するのでしょうか?
「クリエイティビティと仕事を分けるのではなく、ケント・モリというダンサーの理想を追い求めていけば、競争という意味でも自然に“勝ち”に辿り着くと僕は思っています。誰もが自分のスタイルを確立するために、自ら作りあげたピラミッドの頂上を目指している。常に偽りなく純度100%で感じたものを出し続けて自分だけのピラミッドを築いていけば、クオリティの違うものを単純に比較することはできないわけだから、結果として“負け”はないと思うんです。逆に『こうしなきゃいけない、こうすべきだ』という観点で進んでいくと競争にも負けるだろうし、クリエイティビティも消えてしまう」
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誰かと競争するのではなく、自分自身の純度をどんどん高めていけば、結果として誰にも負けないダンサーになれるということですね。そういうポリシーは、やっていく中で固まってきたものですか?
「もともと僕にはそれしかなかったんですけど、つまりはそういうことだと、後に確信した感じです。ダンスでも音楽でも、僕が常々魅力を感じてきたのは誰かの真似ではなく、その人だけの表現。技術は関係なくて、表現したいことが純度100%で伝わってきたときに、僕はすごく感動するんです。昔からそういう表現者を見ることが好きだったし、もちろん僕もそうなりたかった。とにかく自分のまま、唯一無二の存在に」

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自己流でダンスを始めたことが、デメリットではなく自分の強みになっていると。
「間違いないですね。ダンスだけじゃなく、例えば着る服ひとつにしても流行なんか関係なく自分が着たいと思うものを選んできたし、大学を辞めるときもそれがベストだと思って決断した。学生時代は毎日のように先生に怒られていたし、本当にろくなもんじゃなかった。って、今でもろくなもんじゃないですけどね(笑)。ある環境では不必要だと言われてきたものが、ダンスの世界に入った瞬間、必要なものになったんです。ダンスの世界はキャラクターありきだから、クレイジーであればあるほど喜ばれる。逆にどんなに素晴らしい肩書きがあったとしても、良いダンスを見せることができなれば生きていけない。僕はそういう世界が自分に合っていると思うし、僕のダンスには自分自身の生き様みたいなものがダイレクトに出ていると思います」
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今のケントさんの踊りのスタイル、つまりケント・モリというダンサーができあがるうえで、一番影響を受けたものは何でしょう。
「ひとつだけと言われたら、それはもうマイケルしかいない。よくマイケルの振り付けを真似する人がいるじゃないですか? でも僕は別にマイケルの技術を見ていたわけじゃなくて、ただただ彼の心の表現の仕方に感動して、ずっとそこに浸っていたかったんです。彼だけじゃなく、これまで出会った偉大なダンサーたちも同じように心を表現していたし、僕は彼らからたくさんのことを学びました。もっと言えば、人と人は心で接するんだということを教えてくれたのは、両親やおじいちゃん、おばあちゃんだった。そんな家族に囲まれて育つことができた僕は、本当に恵まれていたと思う。それは今の僕のダンスに欠かせないものだと思います」

 

Dream&Love
マイケル・ジャクソンとマドンナが奪い合ったある日本人ダンサーの物語

¥1,575 [税込]/発行:扶桑社

http://www.fusosha.co.jp/