Chilly Gonzales
もはや僕自身も"レイシストのカプチーノ"なのさ──
奇才チリー・ゴンザレス、怪作『IVORY TOWER』を語る
10 10/13 UP
photo&text: Shoichi Kajino

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- たとえばあなたの音楽がうまくいくにはそこには美しいメロディがありすぎるというわけですね。
- 「シリアスにその通りさ。そこにメロディやハーモニーがあるとクラブのフロアでは成功しない。これはTigaもエロル(・アルカン)もアレックス(BOYS BOIZE)も口を揃えて言ったことだよ。『ゴンゾー、僕は君の音楽は好きだけど、クラブではプレイできないよ。そこにはあまりにも要素が多すぎるからね』って。クラブ・ミュージックはボディのためのもので、僕の作っている音楽は心や頭のためのものなんだ」
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- ところで、あなたを『IVORY TOWER』以外の映画で見ました。セルジュ・ゲンスブールの伝記映画の中でしたが。
- 「あれはほんの小さいプロジェクトだったよ。1日か2日で終わった。映画で使われるゲンスブールの曲を僕がピアノで弾いて録音しただけで、あとはほんの1秒出演しただけさ。お金にはなったけど、僕自身はゲンスブールへの大きなパッションもないから、さほど重要なプロジェクトじゃないね。ゲンスブールは過去さ。それに彼はフレンチじゃないか。僕のナンバー・ワン・ヒーローじゃないよ」

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- なるほど。もうひとり、あなたの音楽について話そうとすると、いくつかの共通点がある(パリに住んでいて/大きな体型で/ヒゲをたくわえた/ピアノがうまい/音楽家)セバスチャン・テリエというアーティストと比較してしまいがちなのですが…彼についてはどう思いますか?
- 「比較されることに関してはOKだよ。彼をテレビのショーで見ているのは楽しい。彼は偉大なパーソナリティを持ってるし、スマートだと思う。でも彼はちょっとレイジーだし、彼もまたフレンチだ。音楽的にも進展がないよね。彼の音楽は最初の30秒を聴けばエンディングまで分かる。同じ調子で終わる静的な音楽だよ。僕は違う。音楽を生きるように作っている。始まりがあって、ストーリーを語りエンディングへと導くように。セバスチャン・テリエはレイジーだからストーリーを語るのを面倒がって写真を見せるているだけなんだ。彼は偉大なエンターテイナーで、いい音楽家だとは思うけどね」
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- なるほど。あなたはスローではあるけどレイジーではない。そこがセバスチャン・テリエとの大きな違いでしょうか?
- 「その通り。僕のサクセスへの道のりはスローだけど、僕は一度にたくさんのこともこなすし、仕事は速いんだよ」