「『Sound Concierge』はシリーズを立ち上げたときから、コンセプトというのは変わっていないんですが、シーンの変化というのは、色々な部分で感じてはいます。04年のシリーズスタート当時というのは、ちょうど音楽のダウンロード販売が本格化しようとしていた時期でそのことによって何が変化するかを議論しあっていたわけです。で、当時の僕の考えというか結論は、何万、何十万というカタログがダウンロードショップにストックされるようになれば、逆にそのなかから何を選ぶかが大事、つまりセレクターの持つ意味が大きくなる、というものなんです。結局、流通や販売の形態がどんな進化を遂げたところで、人々の思いは“良い音楽をゲットしたい”ということに尽きるし、ダウンロード販売は、その思いをより純化させるだろうと考えたわけです。よって、選曲という行為がクリエイティブなものだという認識が広がるだろう、とも。だからDJでも選曲家でもなく“サウンド・コンシェルジュ”と名乗った、というわけです」 |
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「この“コンピレーションのセレクトもクリエーションだ“ということの延長にユニクロのWEBキャンペーンであるUNIQLOCKの音楽制作というのも実はあります。僕のオリジナル作品ではないけれど僕がクリエイトする、という意味で。やっぱりオリジナルと違っていろんな約束事や縛りがあるんですけれど、だからこそ燃える部分もある。特に今回のUNIQLOCKはテーマが“時計”だから音楽も60秒で世界観を表現をするという、ものすごい縛りがあったわけです。テンポもBPM60、倍にとっても120。しかもそれが1分の塊としてランダムかつ永遠にループするという、言ってみれば現代音楽のようなコンセプト。そこに毎時00分にサプライズ映像が30秒あるので、そこに必要な音楽も作る。で、さらに時報としての1秒ごとの『ピ、ピ、ピ』という音もマストで入れなければいけない、と。なので、30秒+30秒の1分という塊を何パターンか作ることしたんです。そこで、いろいろと考えてベーシックなリズムはジャズの2ビートが使いやすいかなと気付いて。そこからですね、アイディアが動き出したのは。永遠に繰り返されても、心地よく飽きないというのはもちろん、加えて、アカデミックでもありポップでもあるような、つまりFPMらしさも入れたい、となってきて(笑)。かなりクリアするべきことがあったんですけれど、満足できるものになりました。作った僕でさえ、何時間も眺めてるときもありますから(笑)。ブログパーツという不特定多数の人が利用するためのものへの音楽という意味では、言ってみれば言葉本来の意味でエリック・サティが言った『家具のような音楽』でもある。その意味でラウンジ的でもあるわけで。あらゆる部分で実に、僕らしい音楽だなと思うんです」 |
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