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実に6年ぶりとなるニューアルバム『SUN』(RUSH! PRODUCTION/アスミック 11月30日発売)を引っさげて、サイレント・ポエツが帰ってきた。果たしてこの6年という歳月は、サイレント・ポエツを一体どのように変えているのだろう? その答えは、本作を聴けば一瞬で理解できる。それは“サイレント・ポエツは、サイレント・ポエツ”というシンプルな事実だ。

下田法晴(以下、下田)「アルバム制作は、実は4年くらい前から始めていたんですが、そのころは新しいサイレント・ポエツを表現しなければいけないって考えていたんです。このアルバムから、サイレント・ポエツは(メンバーの脱退により)完全に僕ひとりのプロジェクトとなるわけで、そこで自分が何をしたいのかを改めて知らせていかなければいけないという風に。けれど、制作している間にいろいろと変わってきて、まあ、時間が凄くかかったということも影響しているんですが、とにかく試行錯誤のなかで、追い込まれていって、もうカッコつけてる場合じゃないなと。別にカッコつけてたわけじゃないですけれど(笑)。もっと自分の世界に踏み込んで行っちゃえって感じになって、結局は自分らしいもの、とてもサイレント・ポエツらしいものになっていった。時間がかかった分、自分の持っている要素が熟成したんだと思います」

新しい幕開けを告げるショーン・リーの参加
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そのサイレント・ポエツらしさとは何か。本作にヴォーカリストととして参加しているショーン・リーが実に端的にコメントしている。“ドリーミーでメロウ、ダビーでジャジー。どれも僕の好みだ”と。

下田「ショーンに関しては、今までの僕なら選ばなかったタイプのヴォーカリストだと思うんです。彼を起用しようというのは共同プロデューサーのアラン・ホー(フランスのダンスレーベル、POUSSEZ! 主宰)のアイディアだったんですが、この人選、最初はちょっと違うと思ったんですよ。でも違うからこそ新しい何かが生まれるんじゃないかと思ってトライしたんです」

深く鎮静したグルーヴと端正なサウンドがメランコリックな感情を呼び起こすサイレント・ポエツの音楽世界は相変わらず、というより、さらに濃密に表現された本作であるが、ともすればスタイリッシュに過ぎるあまり浮世離れした印象を与えかねないところを、ショーン・リーのしわがれたつぶやき声が音に温もりを与え、ギリギリで現世に引き止めている。この彼の声こそが、サイレント・ポエツの新しい幕開けを告げている。

下田
「サイレント・ポエツって複数形じゃないですか。それで、僕一人になった段階で少し矛盾を感じて(笑)、名前を変えようかなって思ったりもしたんですが、作品ごとにいろいろな人と組んでやることになるだろうし、いいだろうと。で、今回はショーンとエバートン、そしてアランの3人と僕がサイレント・ポエツのメンバーだって感覚なんです」

サイレント・ポエツはサイレント・ポエツ
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サイレント・ポエツの美学を決定づけているのは、なんといっても流麗なストリングス・アンサンブルだ。これは、前作同様エバートン・ネルソンの手による。

下田
「エバートンとは今回で3度目のレコーディングなんだけれど、元のトラックからイメージを広げてくれて、こっちが思っていた以上のものを出してくれる。何も言わなくてもわかってくれるんですよ」

ニューアルバム『SUN』が告げるのは、6年という決して短くはないブランクを、新たな方向性を追うのではなく、自らのアイデンティティをより濃密にすることで埋めていくという道を下田は選んだ、ということだ。

下田
「最初は違うことをやるつもりだったんだけれど、結局はこうなった(笑)。サイレント・ポエツはサイレント・ポエツなんです。シーンの動向とかは、一切関係ない(笑)
TEXT:Tetsuya Suzuki
http://www.rushproduction.net/
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