THINK PIECE > ERI NOBUCHIKA
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モノクロームなピアノの単音から一転、強靭なハウスビートが輝きを放ちだす『LIGHTS』、硬質なダンスビートの上を情熱的でメランコリックなスパニッシュ・ギターが駆け抜けていく『Voice』、切ない夏の情景を想起させるメロウな『Sketch for Summer』、そしてR&Bフレイヴァのグルーヴィなバラード『鼓動』と立て続けに印象的なシングルをリリースし、瞬く間に注目を集める存在となった信近エリ。とはいえ、信近のすべての楽曲のプロデューサーであり全面的なバックアップをする大沢伸一のプレゼンスが彼女の存在感を“保証”していたという感は否めない。しかし、一人のアーティストとして、信近エリの真価がついに発揮される時が来た。

待望のデビューアルバム『nobuchikaeri』が完成したのだ。

「アルバムを制作をしているときは、『誰かのような感じで』とか、他のアーティストにたとえることができないのが、難しかった。自分がすごく、独特なポジションにいるんだなって改めて自覚しましたね。ただ、あまり立ち位置的なことは意識しないようにしています。ジャンルにこだわるのではなく、歌を軸にしていろんなことができればいいなって漠然とですが、思いますね」

このアルバムもシングル同様大沢伸一との2人3脚で制作されているが、そこで表現されているのは、あくまでも信近エリの世界。先にリリースされたシングルでも1作ごとに“空気”を変えてきた信近だが、きらびやかなダンスチューンから、ボサノバ風のバラードまでさらにヴァラエティに富んだ楽曲が並んだアルバムからは、それゆえ、どのジャンルにも属さない彼女の不思議な個性が浮かび上がってくる。

そして、聴き込むうちに、際立ってくるのが彼女の“歌”。力強さのなかに脆さを、光のなかに闇を感じさせる、この“歌”。これこそが信近エリのアイデンティティだ。

「まあ、確かにアルバムのなかにも飛び抜けて明るいとかっていう曲は、無いですよね(笑)。私自身も、どちらかというと暗いというか憂いを帯びたものが好きなんで。それと、いろんなタイプの楽曲があっても、アルバムを通して聴くとひとつのイメージに収斂していくようなことは意識しました。それで、そんな印象になるんじゃないでしょうか」

エッジの効いたファッショナブルなダンストラックを誰の心にも刺さるポップミュージックとして完成させてしまう“歌”の力。この歌の力が、若干20才のシンガーによる1stアルバムで存分に発揮されているという事実は、やはり驚きである。

『nobuchikaeri』
信近エリ/ソニー
「まだ全然、次のことは考えていませんね。いまだにアルバムが本当に完成したのかな? って思っているくらいで(笑)。…自分のこれからを考えると、どういう方向にも行けると思うんです。幸せなことに。これから、どうなっていくのか、自分のことながらワクワクしてますね」
Text:Tetsuya Suzuki
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