honeyee.com ｜Web Magazine「ハニカム」

曽我部恵一率いるROSE RECORDSのレーベルコンピ、『PERFECT!』にも収録された同レーベル期待のユニット"ホテル・ニュー・トーキョー"の2NDアルバム『2009 Spring / Summer』。これは、傑作である。

グルーヴィーで強かなリズムセクションと、きらびやかでメランコリックなホーンセクションから生まれる、ジャズ・ソウル香るアーバンなサウンド。それはノスタルジックなムードを振りまきながらも、単なるルーツ回帰や懐古趣味とは一線を画す"2009年の音"に確実になっている。それはそうだろう。アルバムのタイトルは『2009 Spring / Summer』。あくまでも、最新モードなのである。

さらに、このアルバムには「Marc Jacobs」というタイトルの曲もあり、彼らがいわゆる"モード"のアプローチを意識していることは間違いない。

ところで、ホテル・ニュー・トーキョーが引用する"モード"とは何か。それは何層にも重なる重層的なスタイルの歴史を一枚の布で覆い隠し、あくまでも表層にのみ人々の視線を集中させることで可能となる美しさ、つまり、厚みを待たない、ゆえに同時代のあらゆる人々の感性に染み込むような美しさではないだろうか。そして、それを可能とするための表現の"薄さ"と"軽さ"なのではないだろうか。

無論、これはホテル・ニュー・トーキョーのサウンドが軽薄な流行音楽である、と言っているのではない。モードの方法論をウォーホル的な手さばきで表現したポップ、と言いたいのである。

それにしても、甘くノスタルジックなジャズを連想させるホテル・ニュー・トーキョーのサウンドが、凡百のエレクトロニックサウンドより、同時代的で未来的な光景を鮮明に脳内に描き出すのなぜだろう。もっとも、それこそが"モード的"である所以なのだが。

Text:honeyee.com