JUSTICE: A CROSS THE UNIVERSE
ユーモアとリアリズムで撮ったJUSTICE USツアーのすべて(あるいは一部)
08 12/26 UPDATE
フレンチ・エレクトロだったり、ニュー・レイヴだったり、とかくジャンルとしてをくくりやすかった一連のムーブメントを振り返ってみて、明らかにエポック・メイキングだったのは、JUSTICEの登場とそのデビュー・アルバム「(クロス)」であった。「」以降、幸運にも日本においてJUSTICEのステージを体験する機会は3回もあった。最初期の2007年夏から2008年夏の最終型まで、その進化を目の当たりにしたオーディエンスも多いはずだ。
「長いツアーを重ねているうちに、レコーディングしたアルバムの音源とライヴの音が、構造的にまったくかけ離れたものになってきて、これならライヴ・レコーディングのアルバムを発表してもいいのではと考えるようになってきた。でも単なるCD1枚ではつまらないから、ずっと何か特別なアイデアがないか模索していたんだ」というグザヴィエ。
そんな折に2度目の大規模なUSツアーが決まり、朋友のアート・ディレクター、グラフィック・デザイナーのSO ME、「STRESS」のヴィデオで物議をかもしたフィルム・ディレクター、ロマン・ガヴラスの二人にツアーに同行してもらい、そのツアーの様子を1秒残らず全ての瞬間を記録することになったのだという。とにかく二人をツアー・バスに乗せた時点で、いったいどんなフィルムを作ろうというアイデアもないままだったと言う。
結果、3週間に及んだそのクレイジーなUSツアーの中で、JUSTICEのステージの周囲で様々な特異なミラクルが起き、二人の監督はその全ての記録に成功。パリに戻ってハードディスク何台分にもおよんだその全ての記録を、ユーモラスなセンスと徹底したリアリズムとともに編集して完成させたのがドキュメンタリー・フィルム「A CROSS THE UNIVERSE」である。明らかにJUSTCEの音楽的なアグレッシヴさやクールさとはかけ離れた人間模様を語ってくれるサイド・ストーリーとしては最高のものだろう。
自らこのDVDの果たす役割は「JUSTICEの音楽的な魅力を伝えるためではない」と断言するように、例えあなたが、夏でもレザージャケットを脱ぐことのないこの二人のパリジャン・ロックスターを知らないとしても、"あるフレンチ・ロックスターのUSツアーの記録(笑いあり)"として楽しめてしまうことであろう。そもそも本来のロック・スターのドキュメンタリーなら脇役でも登場しないであろうツアー・マネージャーやツアー・バスの運転手が、大活躍してしまう作品なのだから。そして進化したJUSTICEの「」はライヴCDで存分にお楽しみください、という潔さである。
「これからしばらくはDJもやらないで、スタジオにこもるよ...」と言い残してパリへと帰って行ったグザヴィエとギャスパーの二人。とりあえずはしばらくの不在をこのDVDとライヴCDで埋めてもらおう。
Text:Shoichi Kajino
JUSTICE "A CROSS THE UNIVERSE"
(Waner Music Japan)
DVD(約60分)+CD(約60分)
発売中 ¥3,480