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SIMIANといえば、彼らの名前よりも、アルバムやオリジナルよりもJUSTICEがリミックスした「Never Be Alone」のほうが断然有名になってしまったという、なんとも皮肉な運命をたどった英国のポップ・バンド。それも解散したのは2004年で、「Never Be Alone」のメジャーヒットはその後の2006年であったのだから、なんともやるせない。

その後にSIMIAN MOBILE DISCOとしてエレクトロの波の中、見事にリヴェンジを果たしたSIMIANのメンバーであったジャスとジェームズ。そしてここに来てようやくアルバム・デビューとともにそのヴェールを脱いだのが「We Are Your Friend, You Never Be Alone～」と何度となくフロアに鳴り響いたあの甘いヴォーカルの張本人であるサイモン・ロードと、ワイズガイズとしてビッグ・ビート時代を切り開いたDJ トゥシェことセオ・キーティングの2人。この2人こそTHE BLACK GHOSTSである。

あの青く甘い歌声と英国的ポップなメロディ・メーカーぶりはSIMIAN期そのままに、トゥシェによるエレクトロ・フレーヴェーとビートをそつなく取り込んだことによって、見事にモダンな3分ポップに昇華してしまっている。その術には手放しに素晴らしいと言ってしまっても良いだろう。

デビュー・シングル「FACE」が、ノーマン・クックのSOUTHERN FRIEDからリリースされたのは2006年。それから完成までには少々時間がかかってしまったが、その間にじわじわ知名度をあげ、ファンからたっぷり募らされてきた期待を何ら裏切ることのない、すばらしいアルバムを完成させてしまった。スカルをアイコンにしたジャケットやヘヴィな印象を受けるアーティスト写真が、肩すかしなほどに純然なポップス。もちろんポスト・エレクトロという意味において。ボーナストラックもたっぷりついて、インターナショナル・リリースから1ヶ月も先行してすでに登場したデビュー・アルバム『THE BLACK GHOSTS』は今すぐ必聴の重要盤オブ・ジ・イヤー。3月にリリースされた彼らのミックスCD『MIX TAPE』そしてすでに決まっているDJセットでの来日のチェックもお忘れなく。

Text:Shoichi Kajino