Kaoru Inoue presents “SEEDS AND GROUND”
多彩な活動を展開する、
井上薫の“コア”を収録。
08 4/08 UPDATE
DJ、ダンスミュージック・プロデューサーとしてのみならず、AURORA、Fusikでのミュージシャンとしての活動も活発化し、いよいよ独自の音楽世界の探求を究めつつある、井上薫 aka CHARI CHARI。その井上がトミー・ゲレロ、SPECIAL OTHERSなどの他アーティストへ提供したリミックス、逆に自身のトラックやAURORAの楽曲のTodd Terje、Calm、Bayaka、Kyoto Jazz Massiveらによるリミックスワークを収録したニューアルバムをリリースした。
こういったリミックス主体の“ワークス集”の場合、どうしてもイメージのバラツキがあり、1枚を通して聴くという気分にならないのだが、なぜか、この井上のアルバムは、自然と通して聴くことができる。というか聴き通してしまう。このことこそが、井上薫というアーティストを雄弁に物語っている、と結論づけるのは、いささか強引だろうか。コアとなるアイデンティティは決して揺るがない井上の楽曲であるからこそ、リミックスを施す側も、決して“それ”を変形させることがなく、当然、井上によるリミックスにも“それ”は色濃く反映されるのではないかと思うのだ。
そう考えれば、井上薫が多岐に渡る表現スタイルを求めているように見えるのも、その頑固な音楽的自己同一性と幅広い音楽知識とに折り合いをつけるための必然の結果であり、その姿は“マルチな才能”というよりは、むしろ不器用で一途な音楽の求道者と呼ぶに相応しい。だから、彼の手による音楽はいつどんな場合でもーーたとえそれが、カオティックでダーティな場末のクラブで鳴っていたとしてもーーある種の美しさと精神性を感じさせるのであろう。……と、ここまで読んで『あんた、一体ナニ言ってるの?』と思った人は、今回収録されたKaoru Inoue名義による新曲『The Whisperer In Germination』を聴くように。ここでは、聴覚における『21世紀のサブライム』が、その片鱗を覗かせている。
Text:Tetsuya Suzuki
Kaoru Inoue presents SEEDS AND GROUND
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