渡邊琢磨(a.k.a.COMBOPIANO)
コンボピアノこと渡邊琢磨が
初めて本人名義で挑んだ意欲作
08 3/12 UPDATE
コンボピアノ名義で作曲家/コンポーザーとして活動し、昨年はデヴィッド・シルヴィアンのワールドツアーにピアニストとして参加するなど、知能指数の高い音楽家からの視点で、ポップフィールドにアプローチしてきた渡邊琢磨。彼が初めて、「渡邊琢磨」という本人名義でリリースするのが本作。
なぜ、ここへきて本人名義でのリリースにこだわったか? このアルバムには本人によるヴォーカルトラックが多い。「デヴィッド・トーマス、ランディ・ニューマン、ミロ・オカーマン、フレディ・マーキュリーなど幾多の偉大なシンガーを本気でオマージュした」という言葉からも感じられるように、他人になりきるからこそ、より自分のパーソナルを大切にする姿勢。コンボピアノという名義を一旦捨て、完全に自分の内側から出るものを練り上げたのだろう。
一聴するとノリのいいドライブ感のあるロック。その裏には、複雑なリズムがひしめき合い、“ミュージシャンズ・ミュージシャン”とも言える内橋和之(Gu)と千住宗臣(Dr)のテクニックがそれを可能にしている。そこに乗るヴォーカルは渡邊のヘタウマヴォーカル。でも愛情たっぷり。前作でトータスのジョン・マッケンタイアをドラマーに迎えたこともあり、音の鳴りはシカゴ音響派を通過したポップ/ロックミュージックという趣だ。もちろん、真骨頂ともいえる、草原の風景が浮かんでくるような、しかしアヴァンギャルドな音世界も健在。
ベースのしっかりとしたクレバーな理論の上に、エモーショナルな勢いを加えた渡邊琢磨の新しい方向性。冷たくも温かい、現代ポップ感が詰まっている。
Text:Tomohiro Okusa