honeyee.com ｜Web Magazine「ハニカム」

デビューから3シーズンを数え、2010S/SのNYコレクションでは、その特異なプレゼンスによって来場者を魅了したオーディン ブック。

これまでのアメリカ人のファッションデザイナーのイメージを覆す、ハードコアかつ快適なスタイルは、この時代を勝ち抜くロジックとポテンシャルを秘め、小規模のコレクションでありながらも、そのクリエイションは閉じることはなく、得意のレザーアイテムでは明らかなテクニックの向上が見られている。

左側のブルゾンは、レザーとコットンの異素材でのコンビネーションによって、従来のレザーブルゾンとまた違うエイジングのプロセスが楽しめる。ディテールもユニークで、フロントは開閉用の付属が一切ない非常にめずらしい仕様で、袖のファスナーのセレクトからもデザイナーの趣向が明確に受け取れる。

一方、右側のモデルでは、モーターサイクルジャケットのスタイルを踏襲しながら、しなやかな革を使うことで、ハードさをうまく打ち消し、結果として他社の製品との差別化へ繋げている。ネックの内側にはフードが収納され、今年からようやく人気に火がつきはじめたフーデッドタイプのレザーブルゾンの一歩先をいく提案を行っている。

デザイナーのオースティン シェルバネンコは、まだ二十代前半と若く、まさに次世代を象徴する才能であるが、これから経験を積み重ねることで、限りない消費と価値観の多様化をひた走るファッションの世界において、どのようなスタンスへと行き着くのであろうか。時間の経過とともによりシームレスとなって進化する新しい時代のミクスチャーなスタイルは、ネクストレベルへ階段を着実に上がっている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato