BALMAIN
オーディナリーな外観と実用性で個性を打ち出す、
メンズモードにおける新しいアプローチの可能性。
10 2/15 UPDATE
2010S/Sの国内のメンズのマーケットにおいて、非常に好調な立ち上がりを見せているバルマンのメンズコレクション。強烈なインパクトのウィメンズと比べ、極めてリアリティが強く、それは競合するブランドと比べても頭1つ抜きん出ている。価格はハイファッションのレンジでもかなり高額な部類に入るが、それを凌ぐ求心力をすでに獲得しており、店頭に並ぶ前から予約完売するアイテムも続出している。
今季のメンスモードは、それがよいか悪いかは別にして、ストリートカルチャーのエッセンスやアプローチを、ある種の記号やトレンドとして取り入れているデザイナーが目立つが、クリストフ・ドゥカルナンの視点はそれらと大きく異なる。
本来、このクラスのデザイナーともなると、ごくありふれたアイテムを強烈なクリエイティビィティによって異化することで、結果的にその才能を世に知らしめるわけであるが、バルマンのメンズコレクションは、よい意味で「普通さ」が際立っている。これは、俗にいう現代のスタンダードを確立したといった類いの話ではなく、あくまでもイレギュラーなケースであって、ファッションの製作において、もっとも難度の高いハードルのひとつをクリアしている、という内容が正しい。
ここで一度具体的なコレクションの概要について述べると、バイクを愛用しているというデザイナーのライフスタイルなどを基軸に、カルチャー色ではなく、主には実用面や装飾のヒントとして、それらのカラーを取り入れ、一見するとどこのブランドか分からないような外観をつくり、逆説的にハイファッションの世界での個性を打ち出している。
つまりバルマンのメンズは、よく巷で比較の対象となっているかつてのディオール オムとは似て非なるスタイルなのだといえ、先入観や情報だけで読めるほど甘いコレクションではなく、クリストフ・ドゥカルナンは、厳密すぎない狙いどころと、高いユーザビリティによって、開かれたクリエイションをつくり出し、メンズモードにおける新しいアプローチを行っている。
広義に捉えるならば、これは新しさというよりもむしろ、ファッションの創作の原点に通じている。その証拠にすべてのピースは、既存のカテゴライズに縛られない優れた汎用性を帯び、近年アパレルの世界で非常にセールスしづらいとされてきたプルオーバーのスウェット類も、みずみずしい鮮度とリラックス感をもったスペシャリティなアイテムへと変化を遂げている。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato
スウェットシャツ 44,100円[税込]
スウェットパーカ 59,850円[税込]
[問]EiGHT MiLLiON 新宿GATES2F
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