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ファッションアイテムの外観は、当然ながら着用することではじめて本来の姿・形となるのだが、実際のところ、それ以外の状態や時間で目にする場合が非常に多い。

そこでデザインの世界でいう「製品のスタイリング」のという視点に立つと、ファッションの製品は、着用時以外のいくつかのケースを視野に入れ、外観を配慮する必要性が少なからずあるのだといえ、これはインダストリアルデザインの分野との共通点でもある。

このピエール アルディの新作は、ブランドの定番的ポジションを担う、ノーズの長いデザートブーツをかなり大胆にアレンジした逸品。実際に変更しているのはアイレットのパートなのだが、これが最小の力で最大の効果を発揮し、従来ならば装飾に不向きな部分に変化を与え、実用性を損なわずにスタイリングの向上を成功させている。これによって、シチュエーションによって程度の差はあるものの、このシューズのスタイルを知る人にも、そうでない人に対しても、確かな鮮度を与える効果が生まれている。

完成されたスタイル、特にこの手のシューズとなると、様々な観点から仕様の変更が難しい場合も多々あるが、このような実例を見る限り、優れたデザイナーのクリエイションは閉じることはなく、数歩先に見据えるヴィジョンはいかなる時も開かれている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato