ADAM KIMMEL
ユニークなアプローチで描き出される、
コンセプチュアルなウエスタンの新解釈。
10 1/25 UPDATE
アダム キメルは数いるアメリカの気鋭のファッションデザイナーのなかでも異色の存在で、そのクリエイションは極めてユニークである。
それは、単に奇をてらっていたり斬新な印象に見受けられる服作りを展開しているという類いのことではなく、どちらかといえばシンプルでカジュアルな部類の衣服の中に、シーズンテーマを忠実に反映させ、従来のファッションブランドと異なる手法のプレゼンテーションでその世界観をつくり出している。
2010S/Sでは、マルボロの広告風のルックを、実際にその広告を撮影していた写真家とシューティングを行い、彼が描く世界をフィルムに収めている。そこに映し出されたコレクションは、本来タフな姿の象徴でもあるウエスタンなアイテムから、実用本意な要素を敢えて省き、装飾性を残しながら、過去にはなかった姿の衣服へとトランスフォームさせている。そのどれもが、柔らかく心地よく、それでいて非常にコンセプチュアルなのである。
彼は、画家の母と写真家の兄を持ち、自身もかつて建築学を専攻していたため、ファッションの世界を他者と異なるアングルから観る術に長けており、おそらくここを起点にすべての創作が生み出されている。
この不況も重なり、近代のファッションが築き上げたシステムに歪みが生じはじめているが、いつの時代もファッションは他の分野と交わることでその窮地を切り抜けてきた。まだまだ先行きは不透明であるが、こうした新しいタイプのクリエイターの登場は少なからずプラスに働き、次の時代におけるファッションの可能性の一端を提示している。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato