BEN DAVIS
時代に適したフレキシビリティで勝負する、
ユニークなシルエットのワークパンツ。
10 1/13 UPDATE
ファッションに特化したユニークな提案が話題を集める新生ベン・デービス。アメリカのワークウエアを象徴する従来のイメージを覆すスタイルは、201OS/Sコレクションでも継続され、楽しく快適なファッションアイテムが多く出揃っている。特にシーズンレスで活用できるアイテム類で強さを発揮しているように見受けられる。
こちらのパンツは、先シーズン好評だったと聞くクロップドパンツを変形させ、より個性を主張させ、シンプルすぎず過剰すぎないバランスで整えられている。2タックなどのディテールもさることながら、一番の特徴は、かなり大胆なシルエットに違いない。ジョッパーズ的な深い股上と渡りの太さと、それとは対照的にタイトな膝下からのラインと狭めの裾幅を持ち、平面に並べると短めの丈にも見えるが、実際はフルレングスに近く、彼らいわく「9.5分長け」といったところらしい。
ここまでアレンジを加えても、このアイテムをベン・デービス足らしめる理由は、やはり素材のニュアンスであろう。これがあることによって、このアイテムを形成するすべてのパートが連結し、それぞれがよりいっそう活きてくるのである。
重複するが、この「シンプルすぎず過剰すぎないバランス」は、価格設定以上に重要な要素であり、この時代を勝ち抜くためのストレートなアプローチだとも捉えられる。
あらゆるソースが入手可能なこの時代において、ファッションブランドの活動は、上記のようにフレキシビリティで勝負することも、頑なに主張を押し通すことも、なんらかの結果さえついてくればどれもが成立するため、一方的な主観や狭い視野で是非を決めつけることは、実にナンセンスである。かといって、総体的または客観的にシーンを見渡そうとしても、個人はおろか、仮に企業レベルであっても、この情報量に対して実行することは極めて困難だといえ、現実的にマクロでもミクロでも適切なリサーチが行えていれるのであれば、すでに違う現実が訪れていてもさほど不思議ではない。
それ以上に、トレンドの多様化や製品のクオリティの進化に対して、それらを身につけ消費する人々の成長が滞っている事態の方が遥かに大きな問題であり、これがあるからこそ、消費も含め、すべての回転を停滞させていることは、なににも増して明らかなことである。
こうした状況下で、時間の経過や相手に期待ばかりしても、大きな変化も生まれなければ、閉鎖感から抜け出すこともさらに遠のいてゆく。それよりも個々が自惚れや慢心を捨て、固定概念から脱却することの方が、より早くレベルアップや問題解決へと繋がるはずである。失敗はつきものだろうが、不要な足枷をなるべく外し、次へと向かうアクションこそが、すべてを促進させ、自ずと新しい時代に適した有用的なシステムを構築していくのである。それは常に歴史が証明している。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Shusei Tsukahara