Mountain Research
インテリジェンスとクリエイティビティが共存する、
.....リサーチの現在を象徴するファッションアイテム。
09 12/11 UPDATE
ジェネラル リサーチで培った手法さらにを突き詰め、従来のファッションの世界におけるシステムと異なる基軸で活動する『.....リサーチ』。
その核となる重要なシリーズが『マウンテン リサーチ』であり、デザイナー小林節正のライフスタイルと深い造詣がつくり出す製品は、ファッションの世界ではあまり見掛けられない高いインテリジェンスが感じられる。
シリーズ名からそのスタイルを連想すると、「高性能」や「エコロジー」などといった類い言葉がすぐ浮かぶが、小林のクリエイションはそういったものとは掛け離れ、実用に則したスペックに、抜きん出たユーモアが加えられ、新しいファッションをつくり出している。そのため、オーセンティックな仕様に基づくムードと、小林が数多く所有しているセディショナリーズのようなクリエィティビティとが、不思議なバランスで共存している。
こちらの重衣料からもそうした傾向が見て取れる。このブランドをよく知る人ならば誰しも傑作として記憶しているダッフルコートの最新作は、ヨーロッパの軍毛布をイメージしたウール地のオリジナルの織物で製作された。象徴的なディテールである、トグルの変わりとなるベルトには、スイスのガルサー社の革を採用。それこそ毛布をまとうような感覚で楽しめる一枚でなのある。
同素材のダウンベストは、いわゆるアウトドアに見られるスタイルではなく、ジレを防寒用に変形させたようなイメージから生み出された。ダウンは完全なる「Made in Japan」で、これは品質の追求もさることながら、クリエイションの可能性を開くという行為とも結びついているそうだ。
近年、ファッションの世界では、クリエイティビティが欠落したコピー商品が目立っているが、近代のファッションは複製を前提に世界が回っていたこともあって、その成り立ちから考えれば、ある意味でこれは自然な流れだともいえる。とはいえ、やはりファッションには創造力も個性も必要であって、これらすべてが一様に共存しているところも、ファッションの曖昧さであり、性格なのであろう。
ここで確実にいえることがあるとすれば、マウンテン リサーチが標榜するアプローチのように、ファッションの世界には新しいなにかが求められており、ここで重要なことは、斬新さや鮮度ではなく、次の時代の基盤となる、多くの矛盾を取り払ったシステムの構築または創造を行えるかどうかなのである。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato