ACRONYM
理想を追求することで進化を促進させる
エロルゾン・ヒューの独創的なクリエイション。
09 11/26 UPDATE
2009A/Wにて、ファッションブランド側の強い打ち出しがあるアイテムの筆頭がアワードジャケット、和製英語で通称スタジャンである。この我々日本人に慣れ親しんだアメリカンカジュアルの定番中の定番を、各ブランドごとの視点でアレンジされたアイテムが市場に数多く流通している。ハイファッションからストリートブランドまで、その解釈はブランドごとに千差万別といった様相を呈している。
こちらの一枚は、ファッションブランドのセオリーと異なるアプローチでコレクションを進化させ、製品に確かな機能を備えることで一目置かれている、エロルゾン・ヒュー率いるアクロニウムの逸品。
着心地を大きく左右する要素の1つでもあるシルエットは、細すぎず太すぎずといった辺りに照準を定め、狙いを絞りすぎない着地点で、快適なフィット感を実現。袖はレザーの天敵ともいえる水を弾くコーティングをかけ、同じくボディのメルトンはウィンドストッパーで隙間風を防ぐ仕様で、このブランドらしい理にかなった工夫をしている。
どのような分野においてもいえることだが、理を手にするということは実に難しいことで、こうした衣類などの実用品において、確かな機能や実用を持ち得ているということは、言い換えれば、企業ないしクリエイターの並々ならぬ研鑽を証明している。なにより実際に製品の合理性を言葉で語るのは誰しも容易であるが、使用した際に他者へユーザビリティを実感させれるレベルに到達できるかどうかは、まったくもって別の話なのである。
この高いハードルを越え突き進むアクロニムのアプローチは、クリエイションの難度に比例した進化の可能性があり、どこにも属さないオルタナティブな路線を切り開くことで高い評価を獲得している。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato