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LAから新しい時代のファッションを発信する、
新進気鋭のファッションデザイナーが来日。
09 10/28 UPDATE
オーディン ブックは、ザ キャスト、ベスらとともに、アメリカの新しいジェネレーションを代表するデザイナーとして注目を集めはじめている期待の新鋭である。彼らは、ここ数年トレンドとして続いたプレッピーやトラッドなどスタイルとまったく異なる提案と、ファッションを基軸とするカルチャーミックスによって、次のシーンを創り出そうという挑戦を試みている。
オーディン ブックのデザイナーを務めるオースティン・シェルバネンコは、若干23歳にして、確かな服作りの実力と将来性を感じさせ、スタートから僅か2シーズン目にして、NYコレクションでのデビューを果たし、続く2010S/Sのランウェイでもユニークな提案を披露している。これまでにいそうでいなかったタイプの気質に触れるべく、来日したオースティンにインタビューを行った。
服をつくり出したキッカケは?
「自分が着たいと思った服がなかったことです。正確にはあるにはあったのですが、それらは金銭的にとても買えない服ばかりでした。とにかく幼い頃から人と違うものを着ていたいという思いがあって、自然とこの道に辿り着いたのだと思います。実験的にいろいろな生地を使っていくつもパターンを引いてみると本当に楽しくて、アイディアが尽きることはありませんでした。その当時から服作りに大きな可能性を感じていました」
はじめて服を製作したのはいつになりますか。
「それは小学生の頃に母から裁縫を教えてもらい、母が十代の頃に買った年季の入ったミシンで、自分の手持ちの服をリメイクした時ですね。Tシャツやスウェット用に絵を描きはじめたのもこの頃で、空想上の世界で自分のブランドをいくつも想像していました。その中のひとつに『FATAL』という名があって、その言葉の意味もよく分からないまま名付けてしまっていました。20歳になる直前から本格的な創作を開始しました」
もっとも尊敬しているファッションデザイナーを挙げてください。
「特別に誰というのはありません。それよりも音楽のシーン、それぞれのジャンルの時代背景などに関心があります。特には、1960-70年代のサイケデリックロック、80年代のパンクとメタル、90年代のグランジロック、90年代後半のメタルなどです。これらから大きな影響を受けています」
あなたの服は見た目との大きなギャップとして、「快適な着心地」を持っていることが特徴的だと思います。その実用性はどのようにして作られるのですか?
「快適な服にするためにはアイディアも重要ですが、まず大切なことは十分な時間を設けて丹念にパターンを仕上げ、モスリンを使ってサンプルを完璧に作ることです。一点一点、時間と手間を惜しまずに、小さなディテールを加えながら製作を進行していきます。それが快適な着心地を確かなものにするのだと思います。仕上げる前に必ず自分で試着をして確かめていきます」
現在のLAではファッションとカルチャーはどのようにリンクしていますか?
「LAではファッションシーンとカルチャーが直接的にリンクしているとは感じられません。そこが僕がこの街を好きな理由でもあります。デニムと安いニットが無数に流通するこの街では、僕にとって美学という意味でも、また街全体として捉えても、ファッションはそこまで大きな意味をなさないものだと思っています。ですがここには無限のイマジネーションがあり、僕自身LAのバックグラウンドから多くの影響を受けています。それは、街の路地、産業地帯の風景、廃墟、建造物、街そのものが持つ雰囲気など、量りきれないほどに...。オーディン ブックの作風は、LAのネガティブな部分に影響を受けたクリエイションに見られがちですが、そういったマイナスな物事や出来事すら受け入れ、ベクトルを創造へと向けさせることができることも、この街の魅力なのだと思います」
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Shusei Tsukahara