BAND OF OUTSIDERS
独自のリアルクローズ路線を進化させた、
スコット・スタンバーグの優れた提案力。
09 10/22 UPDATE
バンド オブ サイダーズは、アメリカ人らしい実用主義を重視したスタイルと、ユーモアに溢れたプレゼンテーションによって、何時いかなる時もリアリティとファンタジーが共存する、ファッションがファッションたる所以を代弁するかのような、象徴的なコレクションを常に打ち出している。
その世界では「バンド オブ サイダーズ=B.D.シャツ」という方程式がすでに成立しているのかもしれないが、初期の頃はもっとラフな印象のシャツが数多くリリースされ、それらがネクタイとともに多くのバイヤーの目に留まり、その結果、現在の人気や認知度が築かれていったのである。
今季のシャツ類は、当時のカッティングなイメージよりも、スキルアップによるレンジの拡大というように見受けられる。その証拠に、アウター的な用途のネルシャツひとつとっても一昨年のモデルよりも一段と仕様がきめ細かくなり、ギンガムチェックのウェスタンシャツは次を見据えた確かな鮮度がある。
この時代だからこそいえることかもしれないが、今やファッションの世界における「リアルクローズ」という定義はさらに曖昧になってきている。事実、かつては定番と呼ばれたスタンダードな製品がその役割を果たせなくなっているケースもあれば、他方では以前なら想像すらできなかったような極端な外観の衣服がなんともリアルに街を闊歩してたりもする。これには複雑な要素が絡むため、その答えを導き出すことは現時点では不可能に等しい。だがここでひとつ確実にいえることは、ファッションブランドはその魅力をもって、「現実を変えるリアリティを創り出す性格を持っている」ということだ。
一度袖を通したら忘れないユニークなシルエットと、アメリカの衣服の伝統を受け継ぐ高い実用性、それによって独自のリアルクローズ路線を打ち出してきたバンド オブ サイダーズ。この混沌とした時代のなかで、彼らは新しい提案とともにどこへ向かうのか。その動向に多くの注目が集まっている。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato