Steven Alan
生粋のニューヨーカーが見据える、
ファッションシーンの現在。
09 10/02 UPDATE
スティーブン アランは、NYに拠点を構え、セレクトショップの経営、ショールームの運営に、シグネチャーブランドも展開する人物であり、また生粋のネイティブニューヨーカーである。両親の影響から幼少の頃から培われた多角的かつ独自のファッションへの嗅覚は、世界各国のファッション関係者が信頼を寄せ彼のショップへと足を運んでいるそうだ。シグネチャーコレクションの中でもっとも有名なアイテムがシャツで、ユニークなディテールを持ち、近年のトラッドブームの一翼も担っていた。
10月7日からはじまるビューティ&ユース ユナイテッドアローズ 渋谷キャットストリート店でのショップ イン ショップのミーティングを兼ねて来日したスティーブンに、多岐に渡るファッションビジネス、ニューヨークと東京、そしてファッションシーンの現状などについて尋ねてみた。
「長い間ファッションに携わるいくつかの仕事をしてきましたが、私にとってショールームとは、客観性が養われる場所であり、多くの人との会話からバイイングのヒントを発見していく場でもあります。シグネチャーコレクションをはじめた経緯もここからで、ある時に事務所の2階のスペースが空いた際に、ショップの商材として『Tシャツを作るような感覚でカジュアルに着れるアイテムがほしい』、と考えた時に自然とシャツが浮かんできたのです。NYのファッションシーンはいつもシビアで、ビジネス的な観点を無視することは難しく、それこそ自己表現を重視するヨーロッパのファッションとは大きく異なります。ここで生き残っていくためにはもっとリアルでなければならないのです。『なにが売れて、なにが流行っているか』、ここを忘れてしまうとまずデザイナーは死んでしまいます。ニューヨークという街は、ピュアな人達をガムのように噛んで捨ててしまいますし、お金のことを無視して生きていくには、なにをするにしてもお金がかかりすぎる街なのです。
今回の来日でも感じられますが、日本、特に東京は、さまざまなことへの興味の幅が広く、その対象への突き詰める精神が強いと改めて感じました。ニューヨークもそうした傾向はありますが、東京に比べると遥かに劣っていると思います。例えば、一口にラーメンといって、街には豊富な選択肢があって、それぞれのこだわりもとても深い。ファッションに関しても同じようなことがいえると思いますし、すべてのことに対してそのようなことが当てはまると思います。東京は高いスタンダードを持っているだけではなく、不完全なことへも理解がある、それはつまり、『すべてがすべてビジネスのためだけで動いているわけではない』という意味にあたります。そのためファッションもショップひとつとっても高いクオリティがあると思いますし、ヴィンテージクロージングも世界各国のモノをこれだけ一気に見れるエリアは世界中を見渡してもないと思います。
アパレル製品もインターネット販売が盛んになっていたとしてもショップの存在価値は必ずあるはずで、実物に触れたり、空気を味わうだけでも、ショップに訪れる価値があると思うのです。仮にその場で商品を購入しなかったとしても...。カスタマーは『なにが本当に必要なのか』を考えながらショッピングするベクトルに向かいはじめています。消費の傾向は、品質のよいモノを厳選して買うケースか、ロープライスの商品、この2極化へ進んでいると思います。この時代になって、新しいビジネスモデルが成立したことで、価格が安くとも非常に質が高い商品がつくれるため、低価格の商品でも十分カスタマーを満足させることが実現可能となったのです。我々スティーブン アランは、ディテールのこだわりなど、ちょっとしたスペシャル感を目指しているので、常にアプリシェイドされるように心がけていきたいと思っています」
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Shusei Tsukahara
[問]ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ
渋谷キャットストリート店
Tel:03-5468-3916