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2009F/Wのニューヨークコレクションでランウェイのデビューも果たした、期待の新鋭オーディン ブック。LAのダウンタウンにアトリエを構え、そこからハイファッションのレンジに向けた製品を発信し、ファッションの世界の現状に対してアンチテーゼを投げかける姿勢はなんとも挑発的であり、その精神性はモノ作りの側面にも反映されている。

デザイナーのオースティンは、素材の選定から、タンニング・パターン・縫製などの工程を自ら一貫して行う。そのため、すべてのコレクションは希少性を帯び、エッジなテイストの内側には、手作業ならではの奥行きが生まれている。つまりこの作業工程は、他社の製品を凌ぐ技術や品質を打ち出すというよりも、他のコレクションとは異なる魅力をつくり出すためのアプローチだと捉えるのが妥当であろう。これこそが彼の創作のオリジナリティであり、表層だけでは捉えきれないクリエイターとしての資質なのである。また総じて、ウィメンズと比べレンジの狭いメンズファッションでは、こうした奥行きは大きなアドバーンテージとなるのである。

今やメンズのファッションアイテムは飽和の状態にあって、ヴィジュアルや品質での差を明確に示すことが難しくなっているが、広義の意味での「アイテムの性格」という部分では、まだまだ模索する余地が残されているように思える。こうして徐々にではあるが、次世代の才能の台頭とともに、新しい時代のクリエイションやパフォーマンスのあり方が姿を現しはじめている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato