ADAM KIMMEL
ユニークなプレゼンテーションとリンクする、
ナチュアルなスタイリングのワークウエア。
09 9/29 UPDATE
NYのファッションシーンにおいて、独特のプレゼンス、または従来のファッションブランドと異なるプレゼンテーションで話題を集めるアダム キメル。
2009F/Wでは、写真家ジェラルド マランガの作品からインスパアされ、60年代にアンディウォーホルを中心としたファクトリーで撮影していた『スクリーンテスト』をマランガ本人とともに続編ともいうべき観点で再現し、コレクションを披露した。
ここでざっくりと述べると、ドキュメンタリーの映像は、いわゆるファッション写真のようなの虚構の美の世界と比べ、肉眼には捉えきれない要素がより多く写るため、被写体はカメラアイと撮影者の眼差しから逃げることは難しく、そうした不可視であったなにかが焼き付けられた映像作品は、総じてエネルギッシュである。近年CGの技術が発展し、写真の分野でもイラストレーション化が囁かれ、もはや「それはかつてあった」というロラン バルドの格言が通用しない時代となったのかもしれないが、そうした映像表現のを一端を、今ここでファッションのプレゼンテーションに引用したことは、他のファッションデザイナーと比較しても、ユニークなスタイルなのであろう。
また今回のアダム キメルのコレクションを読む上で欠かせいないのが「ワークウエア」というキーワードだ。彼の考察によると「NYのアーティストは、どの時代であってもワークウエアを自然に着こなしていて、その姿はどれもが美しく感じられ、それがどのようなコーディネイトであろうと、演出的でなく、誰しもが服に着られずに着こなしていた」という共通項を見出したそうだ。その観点から生まれたアイテムは、どれもが過剰な傾向でなく、かといってベーシックやクラシックといった類いでもなく、アダム・キメル流のナチュラルなテイストでまとめている。さらにトレンドでもある、ダブルブレスト・ショールカラー・フランネルなどの要素を押さえていることも抜け目なく、ビジネス的な視点もしっかりと持ち合わせている。
彼に近いタイプのファッションデザイナーとして、バンド オブ アウトサイダーズのスコット スタンバーグが挙げられるが、リアルクローズとしての提案力と高いプレゼンテーション能力を備えたアメリカのデザイナーが、今後世界のファッションシーンでどのような評価を受けるかどうかは、次の時代を読む上でも見逃せない動向のひとつかもしれない。そこでなによりも重要なことはマーケットにおける消費者のジャッジであることも忘れてはならない。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato
コート 204,750円[税込]
シャツ 49,350円[税込]
カーディガン 90,300円[税込]
[問] Diptrics(ショールーム)
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