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ここ最近日本のマーケットを賑わしているアメカジブームとまったく異なるアメリカンなスタイルで颯爽とシーンに登場した、NYの新鋭ザ キャスト。2名のデザイナーによってつくり出される世界観は、なんとも分かりやすいハードコアなスタイルを打ち出している。一見すると、古今東西で近いタイプのブランドがあるようにも思えるが、彼らは若干毛並みが違う異質のクリエイターであり、それが製品の魅力にも直結している。

従来この手のファッションブランドは、デザイナーが自身のライフスタイルであったりカルチャーを突き詰めている反面、アパレルとしての製品力が弱い傾向があるが、このザ キャストは、それぞれがバランスよく両立されている。仮にその手の知識のなくとも一目瞭然の分かりやすいヴィジュアルと、ハードなルックスとは裏腹の計算されたきめ細かな服作りという組み合わせは、タトゥーにも精通する彼ららしいアプローチなのである。

確かにザ キャストのコレクションは、デザイナーの趣向が定まっている反面、決して広いレンジではないが、フィッティングに長け、なにより衣服としての基盤がしっかりしているため、他社の製品とも合わせやすいという長所を持っている。そのため着こなし次第では、ハイファッションや古着などとのミックスコーディネイトも楽しめるはずだ。

このような実例を見る限り、おそらく今後ファッションブランドは、クオリティや付加価値に特化するだけでなく、もっと高いレベルでトータルのバランスを配慮したクリエイションを行う必要性があり、それこそゲシュタルトの法則のように、創作に関連するすべてのパートが有機的に統合されるバランス感覚が求められている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato