CHRISTOPHER KANE
強烈かつ単純明快なスタイルで勝負する、
気鋭のデザイナーによるプリントTシャツ。
09 8/31 UPDATE
この強烈なプリントtシャツは、2007年S/Sロンドンで行われたレディスコレクションで世界的な評価を得た新進気鋭のデザイナー、クリストファー・ケインの新ラインであり、2009S/Sのレディスで発表されたモンキープリントのドレスをモチーフに、ユニセックスで着れる仕様のtシャツにしたという、非常に分かりやすいピースである。
これらはスタイル的にはどこからどう見ても80'Sにインフレンスされ製作されたアイテムであるが、素材やフィット、テクニックなどに関しては最新のものを使用しているため、多角的な意味で着やすさが格段に向上している。なによりボディがこのようなしなやかなジャージーでなければ、例えインクジェットでのプリントであろうと、ここまで緻密な描写を衣類にプリントするのは難しく、安易なアイディアどころか、プロフェッショナルならではの仕事を成し遂げている。そのすべての根底にあるとんがり具合もロンドンらしい気質なのであろう。
彼の才能は、かの有名なアメリカン ヴォーグの名物編集長アナ・ウィンターのお墨付きでもあるが、我々日本人はどうもこの手の情報に流されやすく、特にマニアックで情報収集に長けたシーンでこそ、こうした傾向が強く見受けられる。事実、仮に直球勝負であれば、ファッションカルチャー全般において、現時点で日本と世界では今もなお圧倒的な開きがあり、そこから影響を受けることは致し方ないことであるが、もう少し視点を変えてクリエイションを読んでいくことも、次のステップとしては妥当なのだと思える。
特に日本は、マーケットの充実ぶりは世界でもトップクラスであり、東京のように狭いエリアでこれだけのショップが立ち並び、世界中のありとあらゆる商品が入手できる場所は世界でも稀だとすると、様々なカルチャーがミックスされことは必然的であり、そこから生まれる新しいスタイルは、日の丸に依存しない新しい世界水準カルチャーの発信へと繫がる可能性もなきにしもあらず、といった見解もオーバーな脚色ではないはずである。
このクリストファー・ケインのコレクションも同様に、ロンドンと東京でコーディネイトの消化の仕方は多少なりとも異なるはずなので、ここで本場にはないユニークな提案ができると、また一歩先のレベルへと歩み寄れるのかもしれない。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato