GARETH PUGH
かつてないスタイルの創造に挑む、
メンズモード期待の新鋭がデビュー。
09 8/20 UPDATE
2009F/Wパリメンズプレタポルテコレクションでのデビューを飾った、期待の新鋭ガレス・ピュー。コンサバティブなブランドと対極の路線ともいえるパワフルなコレクションを披露し多くの話題を集めている。
彼のファッションのキャリアは、母国イギリスで若干14歳の頃からナショナルシアターでコスチュームデザイナーの仕事からはじまり、ファッションデザイナーの登竜門としても知られるセントラル・セントマーティンスの卒業制作のショーで注目を浴び、世に躍り出た。
コスチュームとファッションの境界線を行き来するかのような作風は、その創造性ゆえに、ビジネスの面で苦労も絶えなかったそうだが、リック・オウエンスのアシスタント時代に出会ったコラボレーター、ミッシェル・ラミーの手によって、ある種のリアリティを得ることで、より完成度の高いコレクションを手掛けることが可能となった。
こちらの商品は一見するとリアルクローズなどの類いとは大きく掛け離れた内容にも見受けられるが、実際に袖を通すとまた違った側面も見えてくる。この2アイテムともに、レザーのニットのコンビネーションにタイトなフィッティングでありながらも、既存のメンズのプレタポルテと異なる着心地、ひいては部分ごとのニットのテンションによって、ユニークな可動域を持った衣服となっている。これは創造性もさることながら、優れた技術なしには到底不可能な芸当だといえる。
混迷を極める2009年現在のメンズファッションシーンは、多様化する消費者のニーズや心理を踏まえると、なにかを一方的に肯定したり批判することは難しく、憶測で物事を量るのはさらに困難であり、全体を俯瞰するためには、少なからず客観的な視点と実践が必要となってくる。
現時点でガレス・ピューのクリエイションは、おそらくかつてのスターデザイナーのようにシーンを包括するまでには至ってはいないが、今後の躍進次第では、新しいスタイルの担い手として浮上する才能を持った優秀なクリエイターの一人であることは間違いなく、その手腕に多くの期待が寄せられている。
Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato