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このいかにも手の込んだ仕様のバッグは、ポスタ プロジェットという企画から発案された製品で、一見そうには見えないが、実はこれらのバッグは、リメイクのカテゴリーに分類されるコレクションなのである。ボディには、1960年代のイタリアの郵便物の集配袋を使用し、過去の既製品に今の時代のエッセンスを加算することで、全く別のアイテムへと再生させている。

その変容の過程を見ていくと、まず手始めに、ベースとなる集配袋に特殊なコーティングを行い、そこへ部分ごとにリバースしたホースレザーを取り付けることで、重厚感と力強さを加え、テクスチャーの性質を大きく変化させている。趣きのあるショルダーのストラップは、耐久性の高さからミリタリーで採用されているパーツのレプリカを製作して取り入れてたもの。実用面も抜かりなく、作り手が意図する用途への配慮も十分に満たされている。

上記の生産プロセスへと同様に、このプロジェクトの基盤となっているのが、制作コンセプトである。その概要は、インターネットの発達によるコミュニケーションの変化に対し、表面的でない時間をかけた人と人との交流を再考するということにあり、ここで郵便袋は物質的な素材としての機能だけでなく、プロジェクトを象徴する、ある種のメタファーを有している。このように、コンセプトとテクニックが近いレベルでまとまると、非常に高い強度で製品が仕上がり、ディテールやテクニカルな話を超えたムードが必然的に備わってくる。

今現在、ハイファッションやデザイナーズといったカテゴリーに属する商品の多くは、仮に全体の品質は向上していたとしても、アイテム単体ごとの魅力はとなると数年前の製品と比べ明らかに見劣りする場合が多い。そうした現状からも、提案するデザイナー及びクリエイターは、もう一度クリエイションの質や方向、ひいてはファッションにおけるコミュニケーションのあり方を、もう一度見つめなおす時期に差しかかっているのかもしれない。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato