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ここ数年でかなり広くファッションマーケットに定着したリメイクアイテム。以前のように、クリエイターが手探りでアプローチを模索していた頃と比べ、内容や技術が安定した反面、面白味に欠けるものが多く流通しているが、中にはその傾向に該当しないレベルの製品も存在している。

ジェイ・オーガ・デザインは、あのラルローレンにも認められた、抜きん出た実力を持ったブランドとして、ファンの間で広く認知されている。2009F／Wの新作では、貴重なヴィクトリアンの生地を用いたアイテムを多数提案している。

産業革命とともに経済の絶頂を極めたイギリスのヴィクトリア王朝期のテキスタイルは、今の時代ではつくりせない雰囲気を持ち、ヴィンテージ市場でも価格が高騰しているそうだ。その経緯または文脈を理解した上で、リプロダクトとはまったく別の方向へシフトさせているジュディ・オーガの手腕は見事なものがある。これは単にセンスだけで片付く話ではなく、長年膨大な数のヴィンテージを見続けた彼女の審美眼なくしては不可能な芸当なのである。

このヴィクトリアンの生地に限らず、服飾の世界では時代が生み出した遺産が無数にあるが、そもそもファッションとは、経済と密接な関わりを持つ分野であるため、時代ごとの傑作が生まれることはごく自然な流れなのだといえる。

なによりファッションアイテムは、その性格上、本質的に短命であり、近年その消費の速度やサイクルの変化に伴い、その寿命はさらに縮まっているように見受けられるが、それを凌駕する魅力を持ったヴィンテージには、次の時代への創造に繫がる多くのヒントが隠されている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato