honeyee.com ｜Web Magazine「ハニカム」

不況の影響とアイディアの飽和のためか、ここ最近のメンズファッションの傾向はよりコンサバティブな方向へと流れ、作り手も買い手も一様に、安心や信頼感を求め、オーセンティックなアイテムへの関心が強まっている。これが単なる懐古主義で終われば話が楽なのだが、近年のマーケットの成長とともに目の肥えた消費者を満足させるとなると、そう簡単にはいかないのが現実である。そこで優位なポジションに立てるアイテムのひとつといえるのが、確かな造詣を持ったクリエイターが手掛ける、定番的要素にプラスαのアドバンテージを持った製品である。

フランスのアナトミカのコレクションは、デザイナーの豊富な経験と綿密な計算によって、精度の高い製品をつくり出している。人気のジーンズを筆頭に、どのピースも一見するとベーシックに見えるが、実物を手に取ると、素材・シルエット・ディテールどれをとっても一癖も二癖もあり、ヴィンテージウエアを取り入れるような感覚でコーディネイトすると、無類の強さを発揮する。

ファッションブランドがオーセンティックなテイストを求める場合、オリジナルの持ち味を活かすも殺すも作り手のサジ加減ひとつで、知識やセンスもさることながら、ある種のバランス感覚が問われてくる。つまりこれは、開発というよりも改良という言葉が当てはまり、我々日本人が得意とするモノ作りの趣向と類似している。過去の遺産のように時代を越えて愛される製品をつくり出せるかどうか、クリエイターの真の実力が試される時代がもう間もなく訪れようとしている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato