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この不況の最中にあって、日本国内のメンズファッションの市場で、比較的明るい話題を振りまいているのが、アメリカンカジュアルである。ブームの要因は、第一に日本人に非常に馴染みがあるスタイルであるということと、そのため作り手にもマニアが多く、並々ならぬ意欲で品質の向上とシルエットの改善が日々行われているため、トレンド不在のなか安定した人気を保っている。この傾向は完全に日本人的なアメリカへの眼差しであり、いうなれば日本発のファッションであるが、本場アメリカからこの流れとは著しくベクトルの異なる新しい波が押し寄せている。

チャタブ エクタビは、LAが誇る世界有数のセレクトショップとして名高いマックスフィールドの元名物バイヤーとして名高いクリフォード フォンと、インド人のファッションデザイナーであるサンディ ダラルによる、世にもめずらしいファッションブランドとして、以前から一部のマニアの間で注目されている。

このブランドの独自性をつくり出している起因のひとつに、生産背景及び生産工程が挙げられ、この時勢と逆行して、ほぼすべてのアイテムをハンドメイドで生産、しかもフィニッシングはインドで行われている。そのため、感性だけでは到底不可能なレベルで文化や技術が深く交わることで、なんとも柔らかく深みのある雰囲気を醸し出している。

さらに手作業の工程、ひいては手縫いを用いる理由として、熟練した職人の技巧による衣服の構造が、マシンメイドではつくり出せない心地よいフィッティングを可能にすることを目的にしている点も、彼らのキャリアであれば知識並び経験を通して熟知していることもうなずける。

このようなプロセスで文化が結ばれ完成されるチャタブ エクタビのアイテムは、他民族国家の典型例であるアメリカの文化体系を象徴する、クリエイティビティに溢れたコレクションとなっている。

Text:Tsuneyuki Tokano
Photo:Masaki Sato